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スマホやAIで“海外旅行から失われたもの”。元テレ朝アナ・旅行会社CEOがつづる「最短ルート」の落とし穴

スマホやAIで“海外旅行から失われたもの”。元テレ朝アナ・旅行会社CEOがつづる「最短ルート」の落とし穴

移動は便利に、スマホが取り払った「言葉の壁」

 そしてもう一つ、旅中で大きく変わったのが移動手段です。特にタクシー利用のハードルは劇的に下がりました。今はアメリカならUberやLyft、東南アジアならGrabといった配車アプリが普及し、旅先でも気軽に移動できるようになりました。

 便利になったのは移動そのものだけではありません。コミュニケーションの負担が大きく減ったことも大きな変化です。

 昔はタクシーに乗る前、ホテル名や住所を紙に書いておき、それを運転手さんに見せて「ここへ行ってください」と伝えるのが定番でした。言葉が通じなかったらどうしようという不安は、海外旅行につきものでした。

 でも今は、アプリ上で目的地を指定すれば正確に連れて行ってくれる。料金の支払いまで完結するので、ほとんど会話をしなくても移動できるようになりました。

18歳、ニューヨーク旅でのエピソード

 大木優紀さん そんな変化を感じるたびに思い出す出来事があります。

 18歳、大学生の時にニューヨークに行ったことがあります。フィラデルフィアからニューヨークのセントラル駅に到着して、タクシーの列に並んでいました。乗ったタクシーの運転手さんが、喉の手術をされた影響で、声を出すために、拡声器のようなものを喉につけていました。

 当時の私の拙い英語力。ヒアリング力もなく、拡声器を通した機械音はさらに聞き取りが難しく、会話がなかなか成立しませんでした。運転手さんはとても親切な方だったのですが、お互いの意思疎通がうまくいかず、目的地へ向かう途中も戸惑うことばかり。

 私も初めてのニューヨーク。18歳の私は、不安で心細くて、「ニューヨークってなんて大変な街なんだろう」と思ったのを覚えています。

 でも不思議なことに、その経験があったからこそ私はニューヨークという街を好きになりました。ニューヨークは簡単にはいかない。エネルギーが必要。でも、その分だけ成長の実感もできる場所でもある。

 こういう簡単にはいかない経験が、私にとって、ニューヨークを特別な場所にしてくれたような気がしています。

 スマホは、言語の壁や身体的なハンディキャップさえも乗り越えられる素晴らしいツールです。旅先での不安を減らし、誰もが快適に移動できるようになりました。その恩恵は計り知れません。

 ただ一方で、あの時のように戸惑いながら相手と向き合い、必死にコミュニケーションを取ろうとした経験は、今の旅では生まれにくくなったのかもしれません。便利さによって失われたものもある。ときどきあの不器用なやり取りを懐かしく思うことがあります。



配信元: 女子SPA!

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