大学3年生のころ、私は部活の引退試合と就職活動を両立する毎日を送っていました。「最後の大会で結果を出したい」「第一志望の会社にも受かりたい」――そんな目標に加え、当時は片思い中だったAくんとの恋の行方も気になっていた時期でした。ある日何気なく、お願いごとをしたのをきっかけに、私の人生は思いもよらない方向へ動き始めたのです。
観光中に出会った“謎のおじさん”
私は金融関係への就職を希望しており、就活では全国を飛び回っていました。せっかく遠方まで行くのだからと、その土地を観光したり、友人に会ったりするのが、当時のちょっとした楽しみでもありました。
その日も、地方での面接を終えたあと、友人と会うまでの空き時間を利用して、有名なお城を観光することに。スーツケースを引きながら歩いていると、突然、ひとりの中年男性に声をかけられました。
「観光ですか? よかったら案内しましょうか」
今思えば、知らない人についていくなんて警戒すべきだったのかもしれません。ですが、その男性は穏やかな雰囲気で、不思議と怖さを感じなかったのです。
私は男性に案内されるまま、お城の周辺を歩き回りました。
すると男性は、城の周囲に点在する小さな祠を指さしながら、「ここは順番通りに回るんです」「お賽銭はこの硬貨がいいですよ」と、細かく教えてくれました。
軽い気持ちで口にした願いごと
最後の祠の前で、男性は「ここは、強く願ったことが叶うんですよ」と言いました。
その言葉を聞いた瞬間、私の頭に浮かんだのは、当時片思いしていたAくんのことでした。だから私は、深く考えずにお願いしてしまったのです。
「神様、お願いします。Aくんと付き合えますように。……そのためなら、何が犠牲になっても構いません」
お願いを終えると、男性はなぜか満足そうに笑い、「きっと叶いますよ」とだけ言って去っていきました。
そのときの私は、本当に“代償”のような出来事が起きるなんて、想像もしていませんでした。

