騒動後、やつれた小百合は薫に謝罪し、自身の劣等感と孤独を吐露する。薫は同情しつつも決別を選択。小百合は静かに去り、子どもたちは親の確執に関係なく仲良く遊ぶ。薫は自分らしく歩む平穏な日常を取り戻した。
ママ友が私をバカにしてきた理由
あの日、ランチ会の空気は一変しました。小百合さんは必死に言い訳を口にしていましたが、複数のママたちから具体的な事実を突きつけられ、最後には震える手でバッグを握りしめ、逃げるように店を後にしました。
彼女がなぜ、あそこまで執拗に私を下げようとしていたのか。その理由は、騒動から数日後、意外な形で明らかになりました。
降園時、園の駐車場で車に乗り込もうとした私の背後に、聞き覚えのある声が響いたのです。
「……薫さん、ちょっと待って」 振り返ると、そこには以前の華やかさは影を潜め、ひどくやつれた様子の小百合さんが立っていました。私は反射的に身構えました。
ママ友の謝罪は受け入れたけど…
「小百合さん……。何の御用?」
彼女は地面を見つめたまま、絞り出すような声で言いました。
「……悔しかったの。薫さんは、いつも自然体で、ご主人とも仲が良くて、ひかるちゃんも素直で……。私は、お受験塾のママたちに『附属上がりはレベルが低い』って馬鹿にされて、家でも夫に『高い月謝を払ってるんだから結果を出せ』って責められて……」
彼女の目から涙がこぼれました。
「誰かを下に見ていないと、自分が消えてしまいそうだった。一番優しくしてくれた薫さんを傷つけることでしか、自分の価値を確かめられなかったの。本当に……ごめんなさい」
それは謝罪というよりも、自分の弱さを吐き出しているだけのように聞こえました。彼女の背景に同情する気持ちが全くないわけではありません。
でも、そのために私やひかるが利用され、傷つけられた事実は消えません。
「小百合さん。理由はどうあれ、あなたがしたことは『友達』がすることじゃないわ。……もう、以前のような関係には戻れない」
私はそれだけを告げ、車に乗り込みました。バックミラーに映る彼女の姿は、あまりにも小さく、孤独に見えました。
その後、小百合さんは驚くほど大人しくなりました。ランチ会や集まりにも一切顔を出さなくなり、しばらくして「家庭の事情」という名目で、あんなに固執していたお受験塾も辞めたそうです。
私たちの環境は附属校。18年間の付き合いは続きます。今でも登園時に顔を合わせることはありますが、最低限の挨拶を交わすだけの、乾いた距離感。夫が言っていた通り、無理に心を開く必要はなかったんです。

