「注射が怖くて泣いてしまう」「ワクチンのたびに通院が大変」といった悩みを抱える保護者は少なくありません。特に子どものワクチン接種は、痛みや恐怖が大きなハードルになることもあります。一方で、大人に限らず子どもも重症化のリスクがあるため、日頃の予防が極めて重要です。近年は、鼻にスプレーするタイプのワクチン「フルミスト」が登場し、注射に代わる選択肢として注目されています。そこで今回は、フルミストの特徴や効果、注意点について日本小児科学会小専門医の成戸先生に詳しく解説していただきました。
※2026年3月取材。

監修医師:
成戸 史絵(戸塚共立おとキッズクリニック)
川崎医科大学卒業。小児科医として、風邪などの感染症をはじめ、喘息やアトピー性皮膚炎などの一般小児科疾患の診療に幅広く従事。新生児から中学生までの子どもを対象に、年齢や発達段階に応じた診療をおこなっている。現在はおとキッズクリニックにて、安心して相談できる医療の提供を心がけている。日本小児科学会専門医。
注射なしでウイルスをブロック。2歳から受けられる「フルミスト」とは?
編集部
はじめに、フルミストとはどのようなインフルエンザワクチンなのか教えてください。
成戸先生
フルミストは、鼻にスプレーして接種するタイプのインフルエンザワクチンで、「経鼻弱毒生インフルエンザワクチン」と呼ばれます。鼻の粘膜に直接投与することで、ウイルスの侵入経路に近い場所で免疫を誘導できる点が特徴です。注射を使用しないため痛みがなく、ワクチン接種に対して強い不安や恐怖があるお子さんでも受けやすい接種方法とされています。
編集部
注射するインフルエンザワクチンとはどのような違いがあるのでしょうか?
成戸先生
注射のインフルエンザワクチンは、「不活化ワクチン」と呼ばれ、感染力を失わせたウイルス成分を体内に入れて予防効果を得ます。一方、フルミストは弱毒化したウイルスを鼻に噴霧する生ワクチンです。鼻やのどの粘膜で反応が起こるため、ウイルスの侵入段階での防御が期待されます。また、接種回数は1回で済むため、通院の負担が軽減される点も大きな違いです。
編集部
フルミストは何歳から接種でき、どのような子どもが対象になるのでしょうか?
成戸先生
フルミストは主に2歳以上19歳未満の方が対象とされています。特に、注射を嫌がるお子さんや接種自体が難しい場合に選択肢となります。ただし、生ワクチンのため、一部の方は接種ができません。最も重要な注意点は、気管支喘息の子どもの接種です。喘息の症状が不安定なら避ける必要があります。その他免疫不全、定期的にステロイド、免疫抑制剤を服用している方は、フルミスト接種を避けてください。持病のあるお子さんは、接種前に医師と相談し、安全性を確認するようにしましょう。
メリットは「痛みゼロ」だけじゃない! 予防効果と安全性のリアルとは
編集部
フルミストの予防効果は、注射のワクチンと比べてどうなのでしょうか?
成戸先生
フルミストは鼻の粘膜で反応が起こるため、ウイルスの侵入そのものを防ぐ効果が期待されています。特に子どもでは、注射ワクチンと同等、またはそれ以上の予防効果が報告された年もあります。ただし、流行するウイルスの型やその年の流行状況によって効果は変動します。どちらか一方が常に優れているとは言えないため、それぞれの特徴を理解して選択することが大切です。
編集部
フルミストのメリットについて教えてください。
成戸先生
最大のメリットは、注射による痛みがない点です。注射に対する恐怖心が強いお子さんでも受けやすく、接種のハードルを下げることにつながります。また、原則1回接種で完了するため、通院回数を減らせる点も保護者にとって大きな利点です。さらに、鼻の粘膜で反応が起こる特性から、感染予防の観点でも一定の効果が期待されています。
編集部
副作用や接種できない人など、注意点はありますか?
成戸先生
接種後に鼻水や鼻づまりがみられることが多く、実際にはお子さんにとって不快に感じる場合もありますが、多くは数日以内に自然に改善します。生ワクチンのため、重い喘息がある方や免疫機能が低下している方、妊娠中の方は接種できません。また、接種後1〜2週間はワクチン由来のウイルスが排出される可能性があるため、重度の免疫不全の方との接触には注意が必要です。

