そんな中、事件は起こりました。 おやつの時間になり、みんながシートに集まり始めた時のことです。
望ちゃんが「もっと遊びたい! チョコがいい!」と、突然激しい癇癪を起こしました。彼女の癇癪は一度始まると長く、地面に寝転がって手足をバタつかせ、鼓膜を突き刺すような高音で泣き叫びます。由美子ちゃんは顔を真っ赤にして「もう、恥ずかしいからやめなさい!」と怒鳴りましたが、望ちゃんの勢いは増すばかり。
その時、すぐ横の遊歩道を、高校生くらいの女の子3人組が通りかかりました。 彼女たちは、地面でのたうち回る望ちゃんと、それを怒鳴りつける由美子ちゃんの姿を、冷ややかな目で見つめていました。
「……うわ、すご」
一人の子が、ボソッと呟きました。
「ねえ、私、子どもって基本好きだけどさ……。ああいう子、マジで無理だわ」
「わかるー。あんな風に泣かれたら、私なら絶対無理。親も大変だね」
彼女たちの声は、静まりかえった公園に、はっきりと響き渡りました。 それは、由美子ちゃんがいつも私と壮一に向けて放っていた言葉と、まったく同じ「無理」という断絶の言葉でした。
自分自身に帰ってきた残酷な一言
冴香に対して、「そうちゃんムリ」と、否定し続けてきたママ友・由美子。それが今度は、自分が言われる側になるとは、想像をしていなかったようです。
由美子は、女子高生に対して言い返すことはできず、般若のような顔で彼女たちを睨んでいたそうです…。
やっと気づいた「ムリ」という言葉の鋭さ
私は、帰宅してからもその光景が頭から離れませんでした。まさかあんなところでブーメラン攻撃をくらうとは、誰も予想していなかったはずです。
あの言葉を聞いて「無理」という単語がどれだけ親にとって残酷なものか、気づいてくれたらいいなと思います。
もちろん、望ちゃん自身に罪はありません。それに、望ちゃんにもいいところやかわいい部分はたくさんあることをみんな知っています。
ほんの一部分を切り取って、「無理」と言った女子高生たちが正しいとは思いません。子どもは誰だって、時と場合によって手がかかるものです。壮一のように動き回るのが大変な子もいれば、望ちゃんのようにかんしゃくが激しい子もいる。そういういろいろな一面があると、親同士が理解し合い、日々の頑張りや努力を労り合えたらいいなと思います。
数日後、由美子ちゃんからメッセージが届きました。いつもなら「そうちゃんのあそこが無理」という愚痴が混じっているのですが、その日は一言、『当分、遊びに行くのは控えるね』とだけ書かれていました。
彼女が、あの女子高生の言葉で、自分が私にしてきたことの残酷さに気づいたのかは分かりません。でも、少なくとも「自分の子が他人から拒絶される痛み」は、身をもって知ったはずです。
3歳の子どもが癇癪(かんしゃく)を起こすことは、よくあること。どんな子どもだって、成長過程では大変な場面はあるものです。だからこそ、子育てではお互いに「大変だね」と労うことが大切ですね。
由美子は、自分が言い続けていた言葉が、いかに人を傷つけていたかをようやく気づいたようです。

