甲状腺がんの手術後に起こりうる合併症はどのようなものでしょうか。メディカルドック監修医が甲状腺がん手術後の合併症について解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「甲状腺がん」手術の”入院期間”や費用は?術後に起こる合併症も医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
松本 学(きだ呼吸器・リハビリクリニック)
兵庫医科大学医学部卒業 。専門は呼吸器外科・内科・呼吸器リハビリテーション科。現在は「きだ呼吸器・リハビリクリニック」院長。日本外科学会専門医。日本医師会認定産業医。
甲状腺がんとは
甲状腺はのどぼとけ(甲状軟骨)のすぐ下にあって前から気管を取り囲むように位置している10~20gの小さな臓器です。蝶のような形をしていて、中央の峡部と左右の腺葉から成り立っています。
甲状腺ホルモンやカルシトニンなどのホルモンを分泌したり、脳や骨の成長や脂質や糖の代謝を促進したりする働きをします。甲状腺がんとは甲状腺結節というしこりのなかでも悪性のもののことです。
甲状腺がんにかかっても、多くの場合は自覚症状がないか、しこり以外の症状がありません。症状が進行するにつれて、のどの違和感・声のかすれ・痛み・飲み込みにくさ・誤嚥・血痰・呼吸困難感などの症状が出てくることがあります。
甲状腺がん手術後の合併症
甲状腺がんの手術を行った後に、生じる可能性のある合併症について紹介します。
反回神経麻痺
反回神経とはのどから胸にかけて位置し、声帯や嚥下機能を司る神経です。甲状腺がんの大きさや部位によっては、手術前から反回神経ががんに巻き込まれていて麻痺していることがあります。
このように手術の前から反回神経ががんに巻き込まれている場合、もしくは手術中にがんに巻き込まれていることが判明した場合、通常は反回神経を切断し可能な限り神経の修復を行います。切除範囲が大きい程、反回神経麻痺のリスクは高くなるでしょう。
反回神経麻痺になると、声が出しにくかったりかすれたりすることがあります。ただし反回神経が温存されていれば一般的には6ヵ月程で回復するでしょう。
甲状腺機能低下・副甲状腺機能低下症
手術によって甲状腺を切除して小さくすることで、手術後に甲状腺ホルモンの分泌量が減少します。これを放置すると甲状腺機能が低下し新陳代謝の低下・だるさ・疲労感・食欲不振などの症状があらわれるでしょう。甲状腺が半分以上残っている場合、一般的には治療を行う必要はありません。
しかし、すべて摘出した場合は、生涯にわたって甲状腺ホルモン薬を飲むことで甲状腺ホルモンを補う必要があります。また甲状腺全摘術の際に副甲状腺も切除して機能が温存できなかった場合、血液中のカルシウム濃度が低下する低カルシウム血症や、手足が痺れるテタニー症状が出る場合があります。
そのため、低カルシウム血症にならないためにビタミンD製剤やカルシウム剤の内服が必要となるでしょう。
後出血
甲状腺がんの手術後、いったん止血したのに再び出血する後出血という合併症が出ることもあります。甲状腺が位置する頸部は狭い空間のため、少量の出血であっても気道閉塞を起こすリスクがある緊急性の高い合併症です。後出血になった場合は、出血を止めるために再開創止血術を行います。
喉頭浮腫
甲状腺をすべて摘出したうえに両側頸部のリンパ節郭清を行った場合、手術後に咽頭浮腫という合併症になる可能性があります。咽頭浮腫になると呼吸困難になるリスクが高いため気道切開による対処が必要です。

