暑い季節ほど対策を心掛けたい「熱中症」。今年はどのくらい暑くなるのだろうか、と不安を感じる人も多いのではないでしょうか。近年では一時的な体調不良だけでなく、その後の健康にも影響する可能性が注目されています。全国約246万人分のデータを解析した名古屋工業大学と金沢医科大学の共同研究では、熱中症の経験がある人はそうでない人に比べて、その後の白内障発症リスクが高まる可能性が示されました。この内容について中路先生に伺いました。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
研究グループが発表した内容とは?
編集部
名古屋工業大学と金沢医科大学が発表した内容を教えてください。
中路先生
名古屋工業大学と金沢医科大学は、日本システム技術株式会社の医療レセプトデータベース「REZULT」を活用し、熱中症と白内障発症リスクの関係を調査した共同研究を行いました。2010年4月1日~2023年12月31日の全国約246万人分のデータを分析し、熱中症で受診した人と、受診歴のない人を比較しました。その結果、熱中症の経験がある人は経験がない人に比べて、後に白内障を発症するリスクが約1.96倍高く、特に水晶体の中心部が濁る「核白内障」では約2.16倍高いことが分かりました。また、「30代」や「糖尿病がない人」では、関連がより強くみられました。
ただし、この研究は熱中症と白内障発症の「関連」を示したものであり、熱中症が直接の原因になると証明したものではありません。
今回の結果は、熱中症対策が目の健康を守るうえでも重要である可能性を示しています。日頃から水分補給や体温上昇を避ける工夫を行い、体全体の健康維持につなげることが大切です。
熱中症の後遺症とは?
編集部
今回のテーマに関連する熱中症の後遺症について教えてください。
中路先生
熱中症の後遺症とは、熱中症で体温が上昇し、細胞や臓器がダメージを受けることで、その後も続く症状です。熱中症になった直後だけでなく、数日~数週間後、場合によっては数カ月後に表れることもあります。特に脳、腎臓、肝臓、筋肉などは影響を受けやすく、高体温によって細胞の働きが低下すると、完全に回復できない場合があります。症状の具体例としては、脳への影響では記憶力や集中力の低下、判断力の低下、歩きにくさなどが起こることがあります。また、腎臓の機能低下による疲れやむくみ、肝機能への影響による体調不良、筋力低下が続くケースもあります。
重症化した熱中症では、暑さへの強い不安や精神的なストレスが残ることもあります。熱中症から回復したと思っても、体調の変化を見逃さないようにし、おかしいと思ったら無理をせず医療機関に相談するなど、早めの対応を心がけましょう。

