彼女が取った予想外の行動
彼女はとても居心地が悪そうに身を固くして、裕二さんの方をチラチラ見ながらうつむいていました。「すると裕二が口火を切るように緊迫した表情で『もう言い訳しても仕方がないし、実は俺たち真剣に付き合っ……』と言いかけたところで、彼女も『実はわたしっ……』と同時に声を上げました。その瞬間、彼女のほうがテーブルに手をついた勢いで、水の入ったコップをひっくり返してしまい、服やバッグがびしょびしょになってしまったんですよ」
彼女は「すみません! 水かかりませんでしたか? ちょっとおしぼりもらってきます」と自分のハンカチでバッグを拭きながら、店員さんの方に走って行ったと思ったら……。
「なんと、そのままスピードを加速させて、お店を飛び出して行ってしまったんですよ! 思わず呆気にとられてしまいましたが、まぁ要するに面倒なことに巻き込まれて、『別に私には関係ないし、ばっくれよう』ぐらいの熱量だったんでしょうね。裕二に対して本気ではなかったことが伝わってきましたね」
気持ちが急速に冷めてしまった
そして、驚きと悲しみと気まずさが混ざり合ったような複雑な表情をしている裕二さんに、「あなたさっき『俺たち真剣に付き合っている』って言おうとしてたよね?」と聞いてみたら、間髪入れず『そんなこと言ってないよ』と、彼女がいなくなってしまった途端に誤魔化そうとしてきたそう。「そんな裕二にドン引きして気持ちが急速に冷めてしまった私は『彼女との信頼関係を築くことができなくて残念だったね。そして私とも全く築けていないのがよく分かった。じゃあ、こんなことより早く仕事に戻らないと』と急いでお店を出ました」
そして帰宅後、話し合いをした2人は別居することになりました。
「ですが、なぜか裕二が『離婚はしたくないから、しばらく距離を置いて冷静になってからまたちゃんと話し合おう』とゴネていて。意味わからないですよね、自分が不倫したくせに」とため息をつく有希さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop

