●所持金が少ない中、毎日の飲酒はやめられず
事件当時の所持金は5000円程度だったという。家賃などを支払うための借金も抱えており、仕事が見つからない焦りから衝動的に犯行に及んだと説明した。
一方で、当時は酒を飲んでおり、「記憶が曖昧だ」とも述べた。
被告人は350ml缶を毎日のように6〜7本飲んでいたという。
捜査段階の供述調書には「酒を飲むと大声を出す、物を投げたりするが、酒はやめられない」との内容が記載されている。しかし、公判ではその供述を否定し、「アルコールと事件は関係ない」と主張。一方で、「社会貢献のために酒はやめる」とも述べた。
飲酒と事件との関係については、供述に一貫しない部分もうかがえた。
●60代の被告人に降りかかるこれまでとは違う社会生活
検察官は論告で、現場に散乱した陶器の破片などから犯行の危険性は極めて高く、動機も身勝手で短絡的だとして、拘禁刑2年を求刑した。
これに対して、弁護人は借金がある中で、仕事が見つからない焦りに加え、本人に責任のない腰痛が背景にあったと指摘。高校卒業後から60代まで継続して働いてきた実績を踏まえ、社会適合的な生活が可能であるとして寛大な判決を求めた。
被告人には働く意欲がうかがえた。弁償弁償を進めるためにも、就労できる環境を整えることは重要だろう。
一方で、高齢化や腰痛、生活苦といった問題を抱える中で、再犯を防ぐには就労支援だけでは十分とは言えない。生活全般を支える支援体制と、それを受け入れる本人自身の意識の変化も欠かせない。
そんな課題を考えさせられる公判だった。

