「食道がん」の“初期症状”が出やすい人とは?原因となる「あの嗜好品」【医師監修】

「食道がん」の“初期症状”が出やすい人とは?原因となる「あの嗜好品」【医師監修】

食道がんの初期症状は非常に軽微なため、「大げさかもしれない」と受診をためらう方が少なくありません。しかし、特定のリスク因子に該当する方は、些細な変化にも注意を払うことが早期発見につながります。この記事では、食道がんのリスクを高める要因と、初期症状に気づいたときの受診タイミングについて、わかりやすく解説します。

中路 幸之助

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

食道がんの初期症状が現れやすい方の特徴

食道がんの初期症状は誰にでも起こりうる可能性がありますが、特定のリスク因子を持つ人々ではその発症確率が統計的に高まることが明らかになっています。自身がこれらのリスク因子に該当するかどうかを把握し、もし該当する場合には、より一層、些細な症状にも注意を払うことが、がんの早期発見・早期治療につながる重要な鍵となります。特に、複数のリスク因子を併せ持つ場合は、定期的な検診を検討することが強く推奨されます。

食道がんのリスク因子

食道がんのリスクを高めることが科学的に証明されている主な要因として、以下のものが挙げられます。

飲酒:アルコールそのものよりも、その代謝物であるアセトアルデヒドに強い発がん性があります。特に、少量の飲酒で顔が赤くなる「フラッシャー」と呼ばれる体質の人は、アセトアルデヒドを分解する酵素の働きが弱く、リスクが著しく高まります。現在は酒に強くなったという方でも、この遺伝的な体質は変わらないため注意が必要です。
喫煙:タバコの煙に含まれる多くの発がん物質が、唾液と共に食道を通過する際に粘膜を傷つけ、がんの発生を促進します。飲酒と喫煙の両方の習慣がある場合、リスクは相乗的に増大することが知られています。
熱い飲食物の摂取習慣:熱いお茶やスープなどを頻繁に飲む習慣は、食道粘膜に慢性的な熱損傷を与え、細胞のがん化を誘発する可能性があります。
食生活の偏り:野菜や果物の摂取不足は、がん予防に役立つビタミンや抗酸化物質の欠乏につながり、リスクを高める可能性があります。
逆流性食道炎:胃酸が食道に繰り返し逆流することで、食道下部の粘膜が胃の粘膜に似たものに置き換わる「バレット食道」という状態になることがあります。このバレット食道は、食道腺がんの強力なリスク因子です。
年齢と性別:食道がんは、一般的に50歳以上の男性に多く見られます。

日本で発生する食道がんの約90%は、飲酒と喫煙に強く関連する「扁平上皮がん」という組織型です。一方、欧米では肥満や逆流性食道炎を背景とする「腺がん」が増加傾向にあります。これらのリスク因子に複数該当する方は、症状がなくとも、40歳を過ぎたら定期的に内視鏡検査(胃カメラ)を受けることが、がんの早期発見のために極めて有効です。

初期症状と受診タイミング

初期症状は軽微であるため、「このくらいで病院に行くのは大げさだろう」と受診をためらってしまう方が少なくありません。しかし、食道がんは早期に発見すれば、内視鏡治療のような体への負担が少ない方法で根治を目指せる可能性が高まります。進行した状態で見つかると、大がかりな手術や化学放射線療法が必要となり、治療の難易度も身体的・精神的負担も格段に大きくなります。5年生存率を見ても、ステージ1で70〜80%、ステージ4で10〜15%程度と、報告により異なりますが発見時期によって予後が大きく異なります。したがって、飲み込みにくさや胸のつかえ、しみる感じなどの初期症状が2〜3週間以上続く場合、特に飲酒・喫煙歴のある中高年の方は、決して放置せず、速やかに消化器内科の専門医を受診することが、自らの命を守るための最も賢明な選択です。

食道がんの初期症状を見逃さないための検査と診断

食道がんの疑いがある場合、あるいはリスク因子から定期的なチェックを考える場合、どのような検査が行われるのかを事前に知っておくことは、受診への心理的なハードルを下げ、スムーズな診断プロセスにつながります。食道がんの確定診断と進行度の評価には、いくつかの専門的な検査が組み合わせて用いられます。

内視鏡検査(胃カメラ)の役割

食道がんの発見と診断において、最も重要で中心的な役割を担うのが上部消化管内視鏡検査(一般に「胃カメラ」と呼ばれる検査)です。この検査では、先端に高性能カメラが付いた細いスコープを口または鼻から挿入し、食道、胃、十二指腸の粘膜を直接、詳細に観察します。医師はモニターに映し出されるリアルタイムの映像を見ながら、粘膜の色調の変化、凹凸、血管の異常などをくまなくチェックします。特に早期の食道がんは、正常な粘膜との区別がつきにくい微細な変化しか示さないことがありますが、今日の内視鏡技術はそれを捉えるために大きく進化しています。例えば、特殊な波長の光を当てて血管のパターンを強調するNBIによる拡大観察や、ヨード液を散布して正常な粘膜だけを茶色く染め、がんの部分を染まらない(不染域)として浮かび上がらせる「ヨード染色法」といった特殊な観察方法を併用することで、ごく初期のがんの発見率が飛躍的に向上しています。内視鏡検査中に疑わしい病変が見つかった場合は、その場で組織の一部を鉗子(かんし)でつまみ取って採取(生検)します。この組織片を顕微鏡で詳しく調べる病理検査によって、がん細胞の有無が最終的に確定されます。

その他の検査方法

内視鏡検査で食道がんと診断された場合、次に治療方針を決定するために、がんの進行度(ステージ)を正確に評価するための追加検査が行われます。

CT検査:X線を用いて体の断面を撮影する検査です。頸部から胸部、腹部までを撮影することで、がんが食道の壁を越えて周囲の臓器に広がっていないか、また、リンパ節や肺、肝臓といった他の臓器への転移がないかを広範囲にわたって評価します。
超音波内視鏡検査(EUS):内視鏡の先端に超音波(エコー)装置が搭載された特殊なスコープを用います。食道の内側から超音波を当てることで、がんが食道壁のどの深さまで達しているか(深達度診断)を非常に高い精度で評価できます。また、食道周囲のリンパ節への転移の有無を調べるうえでも極めて有用です。
PET検査:放射性物質を含むブドウ糖に似た薬剤を注射し、がん細胞が正常細胞よりも多くのブドウ糖を取り込む性質を利用して、全身のがんの広がりを一度に調べる検査です。遠隔転移の有無をスクリーニングする目的で用いられることがあります。
食道造影検査(バリウム検査):バリウムを飲んで食道を通過する様子をX線で撮影する検査です。がんによる食道の狭窄の程度や位置、全体像を把握するのに役立ちますが、早期がんの発見には不向きで、現在は内視鏡検査が主流です。

これらの検査結果を総合的に評価し、がんのステージを正確に診断(病期診断)した上で、外科手術、内視鏡治療、放射線療法、化学療法などの中から、個々の患者さんにとって最も適切と考えられる治療方針が決定されます。

配信元: Medical DOC

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