空気が変わった、やさしい結末
「そうだね、そうしようかな。お家でゆっくり食べる方がいいよね」そう言うと、女性は素直にポテトの袋を閉じ、丁寧に紙袋へ戻しました。その仕草には、どこか可愛らしさすら感じられました。女の子は満足そうに「そのほうが絶対おいしいよ!」と、うんうんと頷きながら嬉しそうに自分の席へと戻っていったそう。
「するとおばさんは次の停留所に着く前に、女の子の方を見て『教えてくれてありがとね』と小さく笑ってバスを降りていって……やっぱりおばさんはマイペースなだけで、悪い人じゃなかったんだと確信したんですよね」
その後の車内は、不思議なくらいやわらかい空気に包まれ、さっきまでのざわつきは消え去り、どこか穏やかな一体感のようなものが流れていました。
「女の子は、何事もなかったみたいに窓の外を楽しそうに眺めていて。なんだか、それがすごくかっこよく見えたんですよね」
小さな一言が空気を変えた、優しい出来事。その余韻は、しばらく車内に残り続けていたのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop

