娘夫婦が結婚して数年たったころ、食事会で思いがけない出来事がありました。初めて親族の集まりに参加した婿の何げないひと言に、場の空気が一瞬で変わってしまったのです。悪気はなかったのかもしれませんが、家に対する考え方の違いを強く感じた出来事でした。
婿が初めて参加した食事会
娘夫婦が結婚して数年たったころ、私の兄弟家族も集まる食事会に、婿が初めて参加しました。最初は和やかな雰囲気で食事が進んでいました。親族も婿に気を配りながら話しかけ、少しずつ場にもなじんできたように見えました。
ところが、会話の途中で婿が突然、「この家、古いし広すぎません? 売って娘さんの家の頭金にしたらどうですか」と真顔で言ったのです。
あまりに唐突な発言に、その場の空気が一瞬止まりました。私もすぐには言葉が出ず、親族もどう反応してよいのかわからない様子でした。
先代から受け継いだ家への思い
私は驚きながらも、できるだけ落ち着いて「この家は先代から受け継いだ大切なものだから」と伝えました。しかし婿は、こちらの戸惑いに気付いていないようで、「そのほうが合理的ですよ」と続けました。本人としては、家計や将来のことを考えての発言だったのかもしれません。
それでも、私にとってその家は単なる建物ではありませんでした。先代から受け継ぎ、家族の思い出が積み重なった場所です。簡単に売る、売らないという話ができるものではありませんでした。
娘が慌てて婿を止めたことで、ようやく話題は変わりましたが、親族の間にはしばらく微妙な空気が残りました。

