糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の影響は、心臓や血管にとどまらず、「おしっこ」に関するトラブルとして表れることがあります。頻尿や尿の出にくさは、体からのサインかもしれません。病気を早く見つけるためにできることとは何か――平間クリニック 内科・泌尿器科院長の住友先生に聞きました。
※2026年5月取材。

監修医師:
住友 誠(平間クリニック 内科・泌尿器科)
1991年3月、慶應義塾大学医学部を卒業後、慶應義塾大学病院および関連病院に勤務。1998年10月、コーネル大学泌尿器科学教室にリサーチフェローとして留学。防衛医科大学校准教授(泌尿器科学講座)、愛知医科大学教授(泌尿器科学講座)、藤田医科大学教授(腎泌尿器外科学講座)、藤田医科大学がん医療研究センター副センター長(兼務)、藤田医科大学病院がんセンターセンター長(兼務)、平間クリニック非常勤医師を経て、2024年1月、平間クリニック 内科・泌尿器科を開業。日本泌尿器科学会専門医。
生活習慣病と尿トラブルの関係
編集部
生活習慣病と尿のトラブルは、関係があるのでしょうか?
住友先生
はい、関係があります。糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病は、血管や神経にダメージを与える病気です。そのダメージは、腎臓や膀胱(ぼうこう)、前立腺など尿に関わる臓器にも及びます。
編集部
例えば、糖尿病はどのような尿トラブルを引き起こすのでしょうか?
住友先生
血糖値が高い状態が続くと腎臓の血管が傷つき、糖尿病性腎症と呼ばれる病気を引き起こします。進行すると、重度のタンパク尿が見られることもあります。また、神経障害が起こることで膀胱の感覚や収縮が弱くなり、尿が出にくい、残尿感があるといった症状につながることもあります。
編集部
高血圧も、尿トラブルの原因になるのでしょうか?
住友先生
高血圧も、腎臓に大きな影響を与える生活習慣病です。腎臓は血液をろ過して尿を作る臓器で、血圧の高い状態が続くと腎臓の細い血管が傷つき、腎機能が徐々に低下していきます。腎臓の病気は自覚症状が少ないため、定期的な検査で早く見つけることが重要です。
編集部
脂質異常症についてはどうでしょうか?
住友先生
脂質異常症というと、心筋梗塞や脳梗塞のイメージがあるかもしれません。しかし、排尿トラブルにも関係することがあります。血液中のコレステロールが高い状態が続くと、全身の血管で動脈硬化が進みやすくなります。そのため、前立腺や膀胱、末梢(まっしょう)血管の血流も影響を受け、頻尿、尿の勢いが弱い、残尿感がある、急に尿意を感じるといった症状につながることがあります。
編集部
生活習慣そのものが尿トラブルに与える影響はありますか?
住友先生
食生活の乱れや運動不足、肥満などは生活習慣病のリスクを高め、その結果、尿トラブルにつながることがあります。例えば、肥満は前立腺肥大症の悪化や膀胱機能の低下にも関係するといわれています。ほかにも、塩分の多い食事は高血圧の原因となり、腎臓への負担を増やします。だからこそ、尿トラブルの予防・改善のためには、生活習慣そのものを見直すことが必要です。
尿トラブルの症状と受診のタイミング
編集部
生活習慣病によって起こる尿トラブルには、どのような症状がありますか?
住友先生
生活習慣病に関連する尿トラブルには、頻尿、夜間に何度もトイレに起きる夜間頻尿、尿が出にくい、尿の勢いが弱い、残尿感があるなどの症状があります。また、尿が泡立つ、血尿が出るといった変化は、腎臓の異常のサインである可能性もあります。症状が続く場合は、生活習慣病との関連を疑い、早めに医療機関で相談することが大切です。
編集部
「夜間頻尿は年齢のせい」と考えていました。生活習慣病と関係があるのでしょうか?
住友先生
夜間頻尿は加齢と関係の深い症状ですが、生活習慣病が背景にあることもあります例えば、糖尿病で血糖値が高い状態が続くと尿量が増え、夜間に何度もトイレに起きるようになります。このほか、高血圧や心臓・腎臓の機能低下が関係している場合もあります。また、夜間頻尿は睡眠の質を下げ、日中の疲労や集中力低下につながることもあるため、「年齢のせい」と決めつけず、症状が続く場合は医療機関で相談することが重要です。
編集部
どのような症状があったら、受診を考えるべきでしょうか?
住友先生
排尿に関する症状が長く続く場合や、日常生活に支障が出ている場合は受診を検討しましょう。特に、血尿が出た場合は、腎臓や膀胱の病気が隠れている可能性もあるため、早めに泌尿器科や腎臓内科を受診することが大切です。健康診断で尿異常を指摘された場合も、必ず再検査を受けるようにしましょう。
編集部
症状が軽い場合でも、受診したほうがよいのでしょうか?
住友先生
はい。症状が軽くても続いている場合は、一度医療機関で相談することをおすすめします。尿のトラブルは、生活習慣病や腎臓の病気、前立腺の病気などの初期サインかもしれません。特に、腎臓の病気は自覚症状が出にくく、気付いたときには進行しているケースも少なくありません。早い段階で原因を確認しておくことで、生活習慣の見直しや適切な治療につなげることができます。

