●背景にある「所有者不明土地」問題
このような「所有者不明土地」は、日本全国で相当な面積に及んでいると推計されています。
所有者がわからない土地は、隣接地とのトラブルだけでなく、公共事業や大規模災害後の復旧工事でも支障となります。行政が所有者を特定できず、事業を円滑に進められなくなることもあるためです。
そのため、一定の条件を満たす「管理されないやっかいな土地」を国が引き取り、所有者不明土地の発生を防ぐ目的で創設されたのが、相続土地国庫帰属制度です。
●「価値がある土地なら国へ渡さない」
実際に相続土地国庫帰属制度で国が引き取った土地は、ほとんどが資産価値に乏しく、管理費まで考慮すると赤字になってしまうような土地だと考えられます。
資産価値のある土地であれば、相続人がわざわざ審査手数料まで払って、国に無償で引き取ってもらおうと申請するはずがありません。
さらに、審査の結果、承認されたとしても、実際に国へ引き取ってもらう際には、将来10年間分の土地管理費相当額を国へ納付しなければなりません。
つまり、この制度は、国からお金を受け取るどころか、土地を引き取ってもらうために一定の費用を負担する仕組みなのです。
今回報じられたのは、そうした「やっかいな土地」のうち、国が引き取ったものについて、財務省が最大9割まで価格を下げて売却できるようにする制度です。
国が価値のある土地を無料で取得し、大幅に値引きして売却する制度だと受け止めるのは、制度の趣旨と異なり、誤解といえるでしょう。
【取材協力弁護士】
今井 俊裕(いまい・としひろ)弁護士
1999年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における、開発審査会の委員、感染症診査協議会の委員を歴任。
事務所名:今井法律事務所
事務所URL:http://www.imai-lawoffice.jp/index.html

