●会社は割り切るべきではない
──では、「在宅勤務」は希望できないのでしょうか。
先述の法的な考え方を前提とすれば、市街地にクマが出没しているという事情だけで、従業員が会社に対して在宅勤務を請求できないことになります。
しかし、近年はクマの出没のみならず、人身被害が各地で発生していることも事実です。
従業員が通勤中にクマ被害に遭い、負傷して欠勤や休職を余儀なくされれば、会社にとっても業務への影響は避けられません。
また、「在宅勤務の配慮をしてくれていたら、クマ被害に遭わなかった」と感じる従業員が増えれば、会社に対する信頼や仕事へのモチベーションにも影響します。
その意味で、会社としては、通勤中は安全配慮義務は負わないから関係ない、と割り切るべきでないと考えます。
在宅勤務でも業務に支障がない職種や部署であれば、リモートワークを認めるなど、柔軟な対応を検討することが望ましいといえるでしょう。
●ガソリン代補助や社用車使用も選択肢
──在宅勤務を認めたほうが良さそうですね。
たとえば、クマ被害が報道されたものの、その個体の捕獲や駆除が確認されていない状況があるとします。
そのような場合には、一定の期間、状況を見ながら在宅勤務を認めることも考えられるでしょう。
また、自転車通勤の従業員に対してガソリン代を補助して自動車通勤を促したり、通勤目的での社用車利用を認めたりするなどの配慮があってもよいでしょう。
【取材協力弁護士】
今井 俊裕(いまい・としひろ)弁護士
1999年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における、開発審査会の委員、感染症診査協議会の委員を歴任。
事務所名:今井法律事務所
事務所URL:http://www.imai-lawoffice.jp/index.html

