肺がんがステージ4で骨に転移した場合、どのような症状が現れるのでしょうか。メディカルドック監修医が骨転移が生じるメカニズムと骨に転移した場合の症状について解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「肺がんステージ4で骨に転移した場合の余命」はご存じですか?症状も医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
福田 滉仁(医師)
京都府立医科大学医学部医学科卒業。初期研修修了後、総合病院で呼吸器領域を中心に内科診療に従事し、呼吸器専門医および総合内科専門医を取得。さらに、胸部悪性腫瘍をはじめとする多様ながんの診療経験を積み、がん薬物療法専門医資格も取得している。日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、日本呼吸器気管支鏡学会気管支鏡専門医。
ステージ4肺がんで骨転移が生じるメカニズム

肺がんが進行して他臓器に広がった状態はステージ4と呼ばれ、そのなかには骨への転移(骨転移)も含まれます。肺がんは骨に転移しやすく、進行期の非小細胞肺がんでは約30~40%の患者さんに骨転移が起こるとされています。骨転移は、肺からがん細胞が血流に乗って骨に達し、そこで増殖することで生じます。骨は常に新陳代謝しており、古い骨を壊す破骨細胞と新しい骨を作る骨芽細胞のバランスで保たれています。しかし、骨にたどり着いたがん細胞は破骨細胞を過剰に活性化し、ランクル(RANKL)と呼ばれる物質の産生を促進します。その結果、骨の破壊が加速して骨組織が溶かされ、そこから放出されるカルシウムや増殖因子を利用してがん細胞はさらに成長しやすくなるのです。このような骨を溶かしながら増殖するメカニズムによって、肺がんの骨転移は起こります。
ステージ4肺がんが骨に転移した場合の症状

骨転移が起こると強い痛みや病的骨折、神経圧迫による麻痺などが見られます。また、骨以外の部位への転移によってもさまざまな症状が現れることがあります。
骨転移によって生じる症状
骨に転移が起こると、その部位に強い痛みが生じることが多く、痛みのために日常動作が制限されることもあります。骨ががんに浸食されてもろくなっているため、通常では骨折しないような軽い力でも骨折(病的骨折)を起こしやすくなります。
特に、背骨(脊椎)に骨転移が及ぶと、腫瘍が脊髄を圧迫して手足のしびれや麻痺(歩行困難など)を引き起こすことがあります。これは脊髄圧迫症候群と呼ばれ、放置すると永久的な麻痺につながる重篤な合併症です。さらに、骨が破壊される過程で大量のカルシウムが血中に放出されると高カルシウム血症という状態になり、食欲不振、便秘、せん妄や意識障害など全身症状を引き起こすことがあります。これら骨転移による症状や合併症は患者さんの生活の質(QOL)を大きく損なうため、早めの対処が重要です。
そのほかの症状
骨転移以外にも、肺がんが進行することでさまざまな全身や呼吸器症状が現れます。典型的な症状には、長引く咳や痰、血痰(痰に血が混じる)、胸の痛み、身体を動かしたときの息苦しさ(呼吸困難)や動悸、発熱などがあります。肺がんが肺内で大きくなると呼吸機能が低下し、慢性的な息切れや疲労感を生じることもあります。
また、食欲低下や体重減少などの症状が出ることも少なくありません。さらに、肺がんは骨以外にも脳、肝臓、副腎、リンパ節など臓器にも転移しやすく、それぞれ転移先に応じた症状を引き起こします。ステージ4ではこのように複数の症状が重なりやすいため、症状の緩和と生活の質の維持が治療と同じくらい重要になります。

