全身性エリテマトーデスは、免疫の異常によって皮膚や関節、腎臓、血液、神経などに炎症が起こることがある病気です。治療では、病気の活動性を抑え、再燃や臓器障害を防ぐために、症状や重症度に応じて複数の薬を使い分けます。
使われる薬には、副腎皮質ステロイドやヒドロキシクロロキン、免疫抑制薬、生物学的製剤などがあります。効果だけでなく、感染症や骨粗しょう症、目、妊娠への影響などにも注意しながら治療を続けることが大切です。
この記事は、全身性エリテマトーデスで使われる薬の種類、特徴、副作用、妊娠中や授乳中の薬の考え方を解説します。

監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学附属市民総合医療センター リウマチ膠原病センター)
【資格】
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本リウマチ学会 リウマチ専門医・指導医・評議員
日本リウマチ学会 登録ソノグラファー
日本リウマチ財団 登録医
日本アレルギー学会 アレルギー専門医(内科)
日本臨床免疫学会 免疫療法認定医
日本化学療法学会 抗菌化学療法認定医
日本エイズ学会 認定医
日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医
日本骨粗鬆症学会 認定医
日本母性内科学会 母性内科診療プロバイダー
身体障害者福祉法第15条指定医(肢体不自由、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害)
インフェクションコントロールドクター
博士(医学)
診療科目
一般内科、リウマチ・膠原病内科、アレルギー科、感染症科
全身性エリテマトーデスで使われる主な薬

全身性エリテマトーデスの治療で使われる薬にはどのようなものがありますか?
全身性エリテマトーデスの治療は、主に副腎皮質ステロイドやヒドロキシクロロキン、免疫抑制薬、生物学的製剤などが使われます。症状が軽い場合は、皮膚症状や関節症状を抑えながら、再燃を防ぐ治療が中心です。重症例では、腎炎、中枢神経症状、重い血液異常などを抑えるため、より強い免疫抑制療法が必要になることがあります。副腎皮質ステロイドは、炎症や免疫の過剰な反応を速やかに抑える薬です。発熱や関節炎、皮疹、腎炎、血液異常など、病気の活動性が高い時期に使われます。ただし、長期使用では副作用が問題になりやすいため、病状が落ち着いた後は少しずつ減量します。
また、ヒドロキシクロロキンは、皮膚症状や関節症状などに使われる薬で、再燃予防の目的で長期的に使用されることがあります。免疫抑制薬には、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、タクロリムス、シクロホスファミドなどがあり、臓器障害や重症度に応じて選択されます。生物学的製剤としては、ベリムマブやアニフロルマブなどが使われることがあります。
ヒドロキシクロロキンはどのような薬か教えてください
ヒドロキシクロロキンは、もともと抗マラリア薬として使われてきた薬ですが、現在は全身性エリテマトーデスや皮膚エリテマトーデスの治療薬としても使われています。皮膚症状や関節症状、倦怠感などに対して使用されることがあり、病気の活動性を抑える目的で長く使われることがあります。ヒドロキシクロロキンは、ステロイドの量を減らす治療方針のなかでも重要な薬の一つです。全身性エリテマトーデスでは、症状が落ち着いている時期でも再燃を防ぐために継続されることがあります。
注意すべき副作用として、網膜症があります。頻度は高くありませんが、発見が遅れると視力に影響することがあるため、内服開始前や内服中に眼科検査を受ける必要があります。見え方の異常がなくても、定期的な眼科受診を続けることが大切です。
ステロイドや免疫抑制薬はどのように使い分けますか?
副腎皮質ステロイドは、炎症を早く抑えたい場面で使われます。発熱や関節炎、皮疹、血液異常、腎炎など、病気の活動性が高い時期には、症状や重症度に応じて量を調整します。重症例では、短期間に高用量のステロイドを点滴するステロイドパルス療法が行われることもあります。免疫抑制薬は、ステロイドだけでは病気を十分に抑えられない場合や、ステロイドの使用量を減らしたい場合に使われます。ループス腎炎などの臓器病変では、ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミド、タクロリムスなどが検討されます。維持療法では、アザチオプリンやミコフェノール酸モフェチルなどが選択されることがあります。
薬の選択は、病気の重症度や障害されている臓器、年齢、妊娠の希望、副作用のリスク、過去の治療歴などを踏まえて決められます。同じ全身性エリテマトーデスでも、皮膚や関節が中心の方と、腎臓や神経に病変がある方は治療方針が大きく異なります。
薬の副作用と新しい治療選択肢

ステロイドの代表的な副作用にはどのようなものがありますか?
副腎皮質ステロイドは、全身性エリテマトーデスの炎症を抑えるうえで重要な薬です。一方で、長期間または高用量で使用すると、さまざまな副作用を起こす可能性があります。代表的な副作用には、感染症にかかりやすくなる、骨粗しょう症、糖尿病、高血圧、不眠などがあります。眼科領域では、白内障や緑内障にも留意しましょう。眼の副作用は自覚しにくいこともあるため、長期使用では定期的な眼科検査がすすめられることがあります。
ステロイドは自己判断で急に中止してはいけません。急にやめると、病気の再燃や副腎不全による体調不良につながることがあります。減量は、症状や血液検査、尿検査の結果を見ながら、医師の判断で少しずつ行います。
免疫抑制薬を使う際の注意点を教えてください
免疫抑制薬は、過剰な免疫反応を抑えて、腎炎や血液異常などの臓器障害を防ぐために使われます。一方で、免疫の働きが弱まるため、感染症にも留意します。発熱や咳、息切れ、排尿時の痛み、皮膚の強い赤みなどがある場合は、早めに医療機関へ相談します。薬によって注意点は異なります。ミコフェノール酸モフェチルやアザチオプリンは血球減少や肝機能障害、感染症などに注意します。タクロリムスやシクロスポリンは腎機能障害、高血圧、血糖上昇などが起こりえます。シクロホスファミドは感染症や骨髄抑制、出血性膀胱炎、妊よう性への影響などが問題になることがあります。
免疫抑制薬を使用している間は、定期的な血液検査や尿検査で副作用を確認します。ワクチン接種や手術、妊娠を考える場合も、使用している薬によって対応が変わるため、事前に主治医へ相談することが大切です。
生物学的製剤や分子標的薬はどのような場合に使われますか?
生物学的製剤や分子標的薬は、免疫反応に関わる特定の分子や経路を狙って作用する薬です。従来のステロイドや免疫抑制薬で効果が十分でない場合、再燃を繰り返す場合、ステロイドを減らしにくい場合などに検討されることがあります。全身性エリテマトーデスは、B細胞の働きに関わる因子を抑えるベリムマブや、I型インターフェロン受容体を標的とするアニフロルマブなどが治療選択肢になることがあります。病気の活動性、臓器病変、これまでの治療への反応、副作用のリスクをみながら使用が検討されます。
これらの薬も免疫に作用するため、感染症のリスクがあります。また、すべての患者さんに使えるわけではなく、病状や併用薬、合併症によって適応が変わります。治療選択肢が増えたことで、以前よりもステロイドを減らしながら病気をコントロールする方針を立てやすくなっています。

