サッカー・ワールドカップ(W杯)準々決勝(11日=日本時間12日、ノルウェー1―2イングランド、マイアミ競技場)で、快進撃を続けてきたノルウェー代表の挑戦が幕を閉じた。延長戦にもつれ込む120分の死闘の末、強豪イングランドに逆転負けを喫して史上初の4強入りはならず。それでも、今大会を最も沸かせたチームの一つとして、その存在感を世界に強く焼き付けた。
祖国には今大会中、衝撃的なニュースが届いていた。国際オリンピック委員会(IOC)は7日、フランス・アルプス地域で行われる2030年冬季五輪でのノルディックスキー複合の除外を発表した。「ノルディック」スキーというだけあって、ノルウェーにとって長年メダルを量産してきた「国技」とも呼べるお家芸の五輪除外。そんな沈痛な空気を吹き飛ばし、国民に熱狂をもたらしたのがサッカー代表チームの躍進だった。
1998年フランス大会以来、7大会ぶりのW杯出場を果たしたノルウェー。絶対的エースのアーリング・ハーランドや主将のマルティン・ウーデゴールらを擁し「黄金世代」と呼ばれる陣容は、世界の舞台で前評判通りの圧倒的な力を見せつけた。特にハーランドは敗退するまでの今大会で7得点をマークする大暴れを見せ、南米では「ハーランド」と名付けられる赤ちゃんが続出する事態になるなど、その熱狂は国境を越えて世界中へと波及した。
準決勝進出を懸けたイングランドとの一戦も、彼らの魅力と魂が存分に詰まった激闘となった。前半36分にウーデゴールのパスから22歳のアンドレアス・シェルデルップが鮮やかな先制ゴールを奪取。その後、ジュード・ベリンガムのゴールで同点に追いつかれ、後半11分にはVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の判定によって勝ち越しゴールが幻となる不運にも見舞われたが、優勝候補相手に一歩も引かない堂々たる戦いぶりを披露した。
死闘の激しさを象徴していたのがエースの姿である。後半途中で足を痛めたハーランドだったが、チームはすでに交代枠を使い切っていた。満身創痍の状態で足を引きずりながらもピッチに立ち続け、延長前半の15分間を気力で戦い抜いた。延長後半の開始直前、延長戦に伴う追加交代枠を利用して無念の交代となったが、最後までゴールを渇望する姿勢は観る者の心を打った。大黒柱を欠いたチームは、延長前半3分に許した勝ち越し点を奪い返すことができず、2-1で力尽きた。
ピッチ外でもノルウェー旋風は巻き起こっていた。サポーターが一糸乱れぬ動きで選手を鼓舞する応援スタイル「バイキング・ロウ」は今大会の大きな話題となり、遠く離れた日本の全国高校野球選手権の地方大会でも、スタンドの応援で真似をする学校が現れたほどだ。
激闘の末にベスト8で涙をのむ結果となったが、母国の誇りを胸に戦い抜いたノルウェーの黄金世代は、大会の主役として世界のサッカー史に確かな足跡を残した。

