膵臓がんは自覚症状が乏しいまま進行するケースが多く、「見つかりにくいがん」と言われています。健康診断で腹部エコー検査を受け、「異常なし」との結果に安心している人も少なくありません。しかし、腹部エコー検査には得意・不得意があり、とくに膵臓は十分に観察できない場合もあります。本記事では、健康診断で行われる腹部エコー検査の特徴や、膵臓を調べる際の検査について、AIC八重洲クリニック院長・理事長の澤野誠志先生に話を聞きました。
※2026年6月取材。

監修医師:
澤野 誠志(AIC八重洲クリニック)
日本医科大学を卒業後、放射線治療・がん診療に従事。日本医科大学付属病院において放射線医局長を務め、癌研究会付属病院(現・がん研究会有明病院)放射線診断科副部長を歴任。現在は 「AIC八重洲クリニック」院長・理事長。AIC画像検査センター理事長を兼任し、先進画像診断技術の臨床応用と普及に寄与している。MRI、CT、PET-CT、マンモグラフィなどのモダリティを用いたがんの早期発見、とりわけ膵臓・肝臓領域の画像診断に注力している。日本医学放射線学会放射線診断専門医の資格を有する。
健康診断のエコー検査って、何を見ているの?
編集部
健康診断の一般的なエコー検査では、どういった部分を見ているのですか?
澤野先生
肝臓、胆のう、膵臓、腎臓、脾臓などを観察します。被ばくがなく体への負担が少ないため、健康診断で広く行われている検査です。超音波を使って臓器の形や大きさ、内部の状態を確認し、腫瘍、のう胞、結石、脂肪肝などの異常がないか調べます。
編集部
腹部エコー検査は、どのような病気の早期発見に役立つのでしょうか?
澤野先生
脂肪肝や胆のう結石(胆石)、胆のうポリープ、肝腫瘍、腎結石、腎のう胞などの発見に役立ちます。がんの早期発見の可能性もある検査で、自覚症状がない段階で異常を指摘できる場合もあり、健康診断において重要な役割を担う検査です。ただし、臓器によって観察しやすさに差があります。
編集部
見えにくい臓器というのもあるのですか?
澤野先生
とくに膵臓は、腹部エコーで見えにくい臓器の一つです。観察は行いますが、十分に確認できないケースも少なくありません。
編集部
なぜ膵臓は見えにくいのでしょうか?
澤野先生
膵臓は胃や腸の奥に位置しており、周囲を消化管に囲まれているためです。超音波は空気を通りにくく、胃や腸にガスが多いと膵臓を十分に捉えられません。また、体格や内臓脂肪の影響を受ける場合もあり、とくに膵尾部(すいびぶ:膵臓の左側の細い部分)は観察が難しい傾向にあります。
膵臓はどのように検査する?
編集部
では、膵臓はどのように検査するのでしょうか?
澤野先生
膵臓を詳しく調べる際には、CTやMRIなどの画像検査を行います。腹部エコーでは確認しづらい部分も評価しやすく、膵臓全体の状態を把握するのに役立つためです。症状や健診結果、リスク因子などを踏まえて、必要な検査を選択します。
編集部
CTは、どのような特徴がある検査なのでしょうか?
澤野先生
短時間で広範囲が撮影でき、膵臓の形状や石灰化、周囲の臓器との位置関係を確認しやすい検査です。造影剤を使用すると病変の広がりや周囲の血管への影響なども評価しやすく、膵臓の検査で広く用いられています。
編集部
MRIは、CTとはどのような違いがあるのでしょうか?
澤野先生
MRIは、放射線被ばくがなく、組織コントラストに優れ、小さな膵のう胞、膵管の状態や腫瘍が造影剤を使用せずに確認しやすいという特徴があります。CTとMRIはそれぞれ得意分野が異なるため、目的に応じて使い分けます。
編集部
ほかに、膵臓を詳しく調べる方法はありますか?
澤野先生
超音波内視鏡検査(EUS)を行う場合があります。内視鏡の先端に超音波装置が付いており、胃や十二指腸から膵臓を近い距離で観察できる検査です。通常の腹部エコーでは見えにくい小さな病変を確認しやすく、高い診断能力を持つ検査です。

