インターネットの片隅で数年間、淡々と刻まれ続けてきた「ある数字」が、ついに誰も見たことのない「修羅の道」へと入った。
X上で稼働している自動投稿アカウント「数え続ける世界のナベアツbot」。2021年1月のアカウント開設以来、数字を「1」から順にカウントし続けてきたこのbotが13日、ついに「30万」の大台に到達した。
「数え続ける世界のナベアツbot」は、お笑い芸人・世界のナベアツ(現・桂三度)がかつて一世を風靡した「3の倍数と3の付く数字のときだけアホになる」というネタのルールをX上で再現したもの。「1」「2」「サァンwww!? (3)」といった調子で「ただの数字」と「アホになる」をひたすらポストしてきたこのアカウントだが、そのタイムラインには今、奇妙でエモーショナルな熱気が満ちあふれている。
確定でアホになる30万台 次に「正気」に戻るのは2043年?
これほどまでに注目が集まっている理由は、この先に待ち受けるルール上の「縛り」にある。
数字が「30万」の大台に乗るということは、これから「39万9999」に達するまでのすべての数字に、確定で「3」が含まれることを意味する。つまり、このbotは今までの散発的な「アホ化」とは異なり、ここから約10万投稿にわたって「アホになり続けなければならない」という、ある意味「地獄」のような状態に突入するのだ。
90分に1回という現在の投稿頻度から逆算すると、この「30万台」を抜け出してナベアツbotが次に「正気を取り戻す(=40万に到達する)」のは、今から約17年後。西暦にすると2043年8月になる計算だ。
この「最後の正常投稿」が近づくにつれ、X上では数日前からカウントダウンを見守るような注目が集まっていた。大台直前の「29万9999」の投稿には数万件のいいねが寄せられ、
「途方もない旅に出る人を見送る時の気分ってこんな感じなのかな」
「最後の理性。次に理性のある君を見られるのは、17年後らしい。それまで俺は生きているか、そもそもTwitterという SNSが存続しているかすら怪しい。しかし、君は17年後には再び理性を取り戻すことは変わらない。その時にどんな姿をしていようと、17年後の俺はこの17年前の俺のリプを探し出す」
と、まるで遠くの星へ旅立つ宇宙飛行士を見送るかのような、切なくも温かい感情が渦巻いていた。
「30万」到達――リプライ欄は「17年後のタイムカプセル」に
そして、いよいよその時は訪れた。
「サァンジューマンwww!? (300000)」
ナベアツbotが投稿するや否や、わずか1時間ほどで10万を超えるいいねが集まり、「ナベアツ」がトレンド入り。歴史的瞬間に立ち会ったかのような興奮を伝える投稿が殺到する一方、
「2043年8月23日、また皆で集まろうな」
「次に正常に戻る時は今1歳の赤ちゃんが成人する時期か…」
「まさか自分のネタがデジタルタイムカプセルみたいな立場になるなんて世界のナベアツも思ってなかったやろな」
と、ユーザーたちの関心はすでに「17年後の未来」へと向かい始めている。
さらに、ユーザーの1人が「17年後のナベアツが正常化したときのみんなの目標」を書き込むよう促した投稿に対しては、
「心理士になってたくさんの人を助ける」
「結婚して、子供いてもいなくても幸せな家庭を築く」
「もう一度このポストで笑うこと」
「ここにいる全員が元気に生きてて欲しい 正気に戻る瞬間もみんなで見届けようぜ」
「このポストの存在を忘れるくらいXから離れられてる」
など、未来の自分に向けた目標や、生存確認を約束し合うメッセージが次々と書き込まれている。
もはや世界に対する「祈り」にも似たリプライまで寄せられるなか、きっかり90分後、ナベアツbotは
「サァンジューマンイチwww (300001)」
と投稿。私たちが歩む人生のかたわらで、ナベアツbotはこれからも淡々と「アホの道」を進み続けるようだ。
世界のナベアツ(せかいのなべあつ) 現・桂三度。1969年8月27日生まれ、滋賀県出身。落語家・お笑いタレント。お笑いコンビ「ジャリズム」を経てピン芸人としても活動し、「3の倍数と3の付く数字のときだけアホになる」ネタでブレイク。2011年に落語家・桂三枝(現・六代桂文枝)へ弟子入りし、高座名「桂三度」として活動。2018年にはNHK新人落語大賞を受賞した。

