口が大きく開かない…顎関節症を疑うべき“3大症状”と日常生活に潜むNG習慣

口が大きく開かない…顎関節症を疑うべき“3大症状”と日常生活に潜むNG習慣

顎関節症の症状は「顎の音」「顎の痛み」「開口障害」の3つに分類されます。なかでもカクカクという音は初期から現れやすく、病状の進行とともに音質が変化することがあります。この記事では、音の種類と段階的な変化に加え、顎関節症を引き起こすさまざまな原因についても、一つひとつ丁寧にご紹介します。

大津 雄人

監修歯科医師:
大津 雄人(歯科医師)

東京歯科大学歯学部卒業。東京歯科大学大学院歯学研究科(口腔インプラント学)修了。現在は大津歯科医院勤務。東京歯科大学インプラント科臨床講師。専門は口腔インプラント、インプラント周囲顎骨における骨微細構造特性解析の研究をおこなう。日本口腔インプラント学会専門医。

顎関節症の主な症状とカクカク音の特徴

顎関節症は単一の症状ではなく、複数の症状が組み合わさって現れる症候群です。カクカクという音はその代表的な症状の一つに過ぎません。症状の現れ方や強さには個人差が非常に大きく、ほとんど気にならない軽微なものから、食事や会話といった日常生活に深刻な支障をきたす重篤なものまで、そのスペクトラムは幅広く存在します。

顎関節症の3大症状

顎関節症の症状は、国際的に認められた分類に基づき、大きく3つに分類されます。1つ目は「顎の音(関節雑音)」で、口の開閉時に生じるカクカク・コキコキ(クリック音)や、より進行した状態で見られるジャリジャリ・ミシミシ(クレピタス音)といった音です。2つ目は「顎の痛み(疼痛)」で、関節部分そのものや、食事の際に使う筋肉(咀嚼筋)に、動かしたときの痛みや、押したときの圧痛が現れます。鈍い痛みが続くこともあれば、鋭い痛みが走ることもあります。3つ目は「開口障害」で、口がまっすぐ開かない、以前より大きく開けられない、または開ける途中で引っかかる状態を指します。これらの症状が1つでも慢性的に当てはまる場合は、顎関節症のサインである可能性が高いと言えます。

これら3つの症状は、複数が複雑に重なって現れることもあれば、どれか1つだけが突出して強く出ることもあります。特にカクカクという関節雑音は、痛みや開口障害よりも早期から現れることが多く、顎関節症の初期段階を示す重要な警告サインとして捉える必要があります。

カクカク音の種類と段階的な変化

顎から聞こえる音にはいくつかの種類があり、その音質は病状を推測する手がかりとなります。カクカクあるいはコキコキと聞こえる明瞭なクリック音は、前述の通り、関節円板が一時的に正常な位置からはずれている状態(復位性前方転位)を示します。一方、ジャリジャリ・ザラザラといった、砂を踏むような音(クレピタス音)は、関節円板の摩耗や穿孔(穴が開くこと)が進み、骨同士が直接こすれ合っている可能性を示唆します。これは関節軟骨の変形を伴う変形性顎関節症へと進行しているサインであり、一般的にクリック音よりも病状が進んだ段階と考えられます。

音の変化は病状の進行と密接に連動していることがあります。最初は小さなカクカク音だったものが、徐々に音が大きくなったり、音とともに痛みが伴うようになったりする場合は、関節内部の炎症や損傷が進行している可能性が考えられます。また、注意すべきは、これまで鳴っていたカクカク音が突然消えた場合です。これは治ったのではなく、ずれた関節円板が元の位置に戻らなくなった結果(非復位性前方転位)、口が開かなくなる「ロック」状態に移行したサインである可能性があり、むしろ状態が悪化しているケースも多いため、速やかに専門の医療機関を受診することが強く推奨されます。

顎関節症を引き起こす主な原因

顎関節症は、単一の原因で発症することは稀で、複数の要因が積み重なって発症する「多因子性疾患」とされています。個人の顎関節の耐久力(構造的耐久性)を、かかる負担が上回ったときに症状が現れるという考え方が主流です。代表的な原因を多角的に理解することで、自分に合った予防策や改善のヒントが見えてきます。

噛み合わせや姿勢の問題

顎関節症の原因として、従来から広く知られているのが噛み合わせ(咬合)の問題です。虫歯治療で入れた被せ物がわずかに高かったり、歯を失ったまま放置していたりすると、上下の歯が正しく噛み合わず、顎関節や周辺の筋肉に不均一で過剰な負担がかかります。また、もともとの歯並びの乱れ(不正咬合)も、特定の歯に力が集中しやすく、顎関節に余分な力がかかり続けることで症状を誘発する一因となります。

さらに、近年特に注目されているのが、日常的な姿勢と顎関節症との深い関わりです。長時間のデスクワークやスマートフォンの使用による「前傾姿勢」や「首の前屈み(いわゆるストレートネック)」は、頭部の重心を前方に移動させます。人間の頭は約5kgの重さがありますが、首が前に傾くほど、それを支える首や肩の筋肉への負担は増大します。この時、身体はバランスを取ろうとして無意識に下顎を後方に引くため、顎関節や咀嚼筋に持続的な緊張をもたらし、顎関節症を発症・悪化させる大きな要因となり得るのです。

歯ぎしり・食いしばりの影響

歯ぎしり(ブラキシズム)や日中の食いしばり(クレンチング)は、顎関節症の最大の悪化因子の一つです。食事の際に食べ物を噛む力は数kg程度ですが、歯ぎしりや食いしばりの際には、自分の体重の数倍、時には50kgから100kg以上もの異常な力がかかるとされています。このような強大な力が、睡眠中などに長時間にわたって加わり続けることで、関節円板や周囲の筋肉、さらには歯そのものに深刻なダメージを与えます。

これらの行動は、ストレスや不安と深く関連しており、睡眠中や何かに集中している際に無意識に行われることが多いため、自覚症状がないケースがほとんどです。朝起きた時に顎が疲れている、こめかみが痛い、歯がすり減っていたり欠けていたりする、頬の内側に白い筋(圧痕)があるといった状態は、歯ぎしり・食いしばりのサインかもしれません。放置すると症状が悪化する一方なので、歯科医院を受診し、夜間に装着するマウスピース(スプリント)などを用いた対策を相談することをおすすめします。

配信元: Medical DOC

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