今回は、たまたまそんなバスに乗り合わせてしまった女性のエピソードを紹介しましょう。
車内に響いた突然の怒声
ある日の夕方。田辺綾子さん(仮名・35歳)は、仕事帰りにいつもの路線バスに揺られていました。夕方の車内は、仕事終わりの会社員や学生でほぼ満席。誰もが疲れた表情でスマホを見たり、ぼんやり窓の外を眺めたりしながら、静かに目的地へ向かっていたそう。
「すると60代後半ぐらいの男性が乗ってきたのですが、いきなり運転手さんに向かって大きな声で文句を言い始めたんですよね」
男性は乗り込むなり「時間より遅れてるじゃないか! 俺を待たせやがって! おいおい、なんでこんなに混んでるんだ!」と車内中に響く声で怒鳴り始めました。
突然の怒声に、車内の空気がピリッと張りつめます。運転手も驚いた様子でしたが「申し訳ありません」と落ち着いた声で対応していたそう。「けれど男性はそれで収まるどころか、今度は『最近の若い奴は席も譲らない。スマホばっかり見やがって……ったく、バカばっかりか』と周囲の乗客にまで聞こえる声でイライラをぶつけるように不満を言い続けたんです」
周囲に敵意をまき散らすような態度に……
しかも、その言い方が異様だったと綾子さんは感じました。誰か特定の相手に怒っているというより、周囲全員に敵意をまき散らしているような雰囲気で、前の座席の高校生をジロジロ睨んだり、ため息をわざと大きくついたり、舌打ちを繰り返したりしていたといいます。
「正直、みんな早く降りてくれないかなと思っていたと思います。私もかなりウンザリしていたので」小さな子どもを連れた母親は視線をそらし、サラリーマン風の男性も寝たふりをするように目を閉じていたそう。
「するとその時、最前列に座っていた小学校低学年くらいの女の子が、急にランドセルを開け始め、ガサゴソと中を探り始めたんですよね」
綾子さんは最初、「何をしているんだろう?」と思いました。

