マッサージでも消えない首こりの正体とは?顎関節症を放置する“ドミノ倒し”の恐怖

マッサージでも消えない首こりの正体とは?顎関節症を放置する“ドミノ倒し”の恐怖

顎関節症は、口や顎だけにとどまらず、頭痛や肩こり、耳鳴りといった全身のさまざまな症状と関わりがある場合があります。また、症状の正確な把握には、問診・触診・画像検査を組み合わせた専門的な診断が役立ちます。この記事では、顎と全身症状のつながり、そして医療機関での診断の流れについて解説します。

大津 雄人

監修歯科医師:
大津 雄人(歯科医師)

東京歯科大学歯学部卒業。東京歯科大学大学院歯学研究科(口腔インプラント学)修了。現在は大津歯科医院勤務。東京歯科大学インプラント科臨床講師。専門は口腔インプラント、インプラント周囲顎骨における骨微細構造特性解析の研究をおこなう。日本口腔インプラント学会専門医。

顎関節症と全身症状のつながり

顎関節症は、口や顎だけの局所的な問題にとどまらず、頭部・頸部・肩、さらには全身にさまざまな関連症状を及ぼすことが知られています。この「顎から全身へ」という影響の広がりを理解することで、一見無関係に思える身体の不調の原因が、実は顎にあったという可能性に気づくことができ、より包括的な視点で自身の健康状態を捉えることができます。

頭痛・肩こりとの関連

顎関節症と頭痛・肩こりの間には、極めて密接な関係があることが臨床的に多く報告されています。顎を動かす筋肉(咀嚼筋)である側頭筋や咬筋は、側頭部から首、肩にかけての筋肉群と筋膜で連結し、連携して働いています。そのため、顎関節に問題が生じると、咀嚼筋が過緊張(こわばり)を起こし、その緊張が関連する筋肉へと波及します。この筋肉の持続的な緊張が血行不良を引き起こし、頭痛(特にこめかみ周辺に現れる緊張型頭痛)や、頑固な肩こり・首こりの直接的な原因となることがあります。

実際に、顎関節症の治療(スプリント療法や理学療法など)を受けることで、長年悩まされていた原因不明の頭痛や肩こりが劇的に改善されたというケースは少なくありません。マッサージや鎮痛薬でも改善しない慢性的な頭痛や肩こりの背景に、未診断の顎関節症が隠れている可能性は十分に考えられます。

耳鳴り・めまいとの関係

顎関節は、解剖学的に耳の穴(外耳道)のすぐ前に位置しており、非常に近接しています。このため、顎関節内部の炎症や、咀嚼筋の過度な緊張が、耳の周囲の組織や神経に影響を与え、耳に関連した症状として現れることがあります。顎関節症の患者さんの中に、耳鳴り、耳の詰まった感じ(耳閉感)、難聴、めまいなどを訴える方が一定数見られるのはこのためです。

もちろん、耳鳴りやめまいはメニエール病や突発性難聴など、耳鼻咽喉科領域の疾患が原因であることが多いため、まずは耳鼻咽喉科での精査が最優先です。しかし、そこで異常が見つからない場合に、顎関節症がその一因となっている可能性も考慮に入れる必要があります。歯科と耳鼻咽喉科が連携して診断・治療にあたることで、症状の全体像が明らかになり、効果的な治療につながることがあります。

顎関節症に対する医療機関での診断と検査

顎関節症の診断は、患者さんの訴えを詳細に聞く問診から始まり、触診、そして必要に応じた画像検査などを組み合わせて総合的に行われます。正確な診断を受けることが、数ある治療法の中から個々の症状に最も合った治療方針を立てるための第一歩となります。

診断の流れと問診の重要性

顎関節症の診断において、問診は極めて重要です。医師は、「いつから、どのような症状があるか」「音の種類、痛みの場所や強さ、痛むタイミング」「口は開きにくいか」「日常生活への影響はどの程度か」といった具体的な症状について詳しく質問します。さらに、歯ぎしり・食いしばりの自覚や指摘の有無、仕事や家庭環境におけるストレスの状況、頬杖やうつ伏せ寝などの生活習慣、過去の歯科治療歴や外傷歴なども、原因を探るための重要な情報となります。

問診に続いて、視診と触診が行われます。顔の左右対称性、顎関節や咀嚼筋(咬筋、側頭筋など)を押したときの痛みの有無、開口量(定規で何ミリ開けられるかを計測)、開閉時の顎の動き方(左右へのずれや揺れがないか)などが詳細に確認されます。これにより、症状の重症度や、問題の主座が関節にあるのか、筋肉にあるのかがある程度判断されます。

画像検査の種類と目的

問診や触診で得られた情報をもとに、より詳細な状態を把握するために、必要に応じてパノラマX線撮影、CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像)などの画像検査が実施されます。パノラマX線撮影は、顎全体の骨格を手軽に把握でき、下顎頭の著しい変形や吸収の有無を確認するために用いられます。CTは、骨の形態を3次元的に、より詳細に評価するのに優れています。一方、MRIはX線を使用せず、磁気の力で体内の様子を画像化する検査で、骨だけでなく、顎関節症の鍵を握る関節円板の位置や形状、炎症の有無といった軟組織の状態を鮮明に描き出すことができる唯一の検査です。

これらの検査結果を総合的に評価し、「関節円板のずれが主な原因(関節円板障害)か」「筋肉の過緊張が中心(咀嚼筋痛障害)か」「骨の変形が生じている(変形性顎関節症)か」といった病態を正確に分類し、それに基づいた最適な治療方針が決定されます。歯科口腔外科や大学病院の専門外来では、こうした体系的な検査と診断を受けることが可能です。

配信元: Medical DOC

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