膵臓がんで使用する抗がん剤の種類はどのようなものでしょうか。メディカルドック監修医が膵臓がんで使用する抗がん剤の種類について解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「膵臓がん」で使用する「抗がん剤」はご存知ですか?副作用となる症状も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
岡本 彩那(淀川キリスト教病院)
兵庫医科大学医学部医学科卒業後、沖縄県浦添総合病院にて2年間研修 / 兵庫医科大学救命センターで3年半三次救命に従事、近大病院消化器内科にて勤務 /その後、現在は淀川キリスト教病院消化器内科に勤務 / 専門は消化器内科胆膵分野
「膵臓がん」とは?
膵臓がんとは膵臓にできるガンの事です。膵臓がんは胃や腸の背中側にあり、なかなか発見しづらいこと、進行が早いことなどにより見つかったときには進行がんとなっていることも少なくありません。膵臓がんが進行して手術等ができなくなった場合、抗がん剤の治療(化学療法)となることが多いでしょう。ここでは膵臓がんの抗がん剤治療を中心に解説していきます。
膵臓がんで使用する抗がん剤の種類
膵臓がんの時に使用する抗がん剤はいくつか種類がありますが、ガイドライン上では使用する順番が決まっています。しかしながら人それぞれの状態(年齢など身体の状態)によって使用する抗がん剤やその量は調整されます。
FOLFIRINOX療法(mFOLFIRINOX療法)
FOLFIRINOX療法ではイリノテカン、オキサリプラチン、レボホリナートカルシウム、フルオロウラシル(5-FU)という薬を併用する治療法です。膵臓がんの抗がん剤治療でも1番目に推奨される治療の一つですが、効果が高いとされる反面、副作用も強い治療です。そのため、高齢の方には行いにくく、比較的元気な若い人に対して行います。また、日本人は一部の副作用(骨髄抑制:血球減少)が起こりやすいとされており、一部の薬を減量したもの(modified FOLFIRINOX療法:mFOLFIRINOX療法)を行う施設も多いでしょう。その他、この治療法にはイリノテカンという薬が使用されており、遺伝子型(UGT1A1) によっては副作用が出やすく、薬を減らしたり薬自体が投与できないということもあります。そのため治療を始める前に血液検査でこの遺伝子を調べます。
この治療では、まず外来で4時間ほどかけて薬を投与し、その後でフルオロウラシル(5-FU)を46時間かけて点滴で投与します。そのため、治療を始める前に皮膚の下に埋め込む形でカテーテルを留置し、そのカテーテルについている器具に点滴の針を刺して行います。最後に行う46時間の点滴については、自宅に帰って自分で針を抜く形になります。この治療を2週間おきに繰り返していきます。
ゲムシタビン・ナブパクリタキセル併用療法(Gem/nab-PTX療法、GnP療法)
ゲムシタビン・ナブパクリタキセル併用療法とはその名の通りゲムシタビン(ジェムザール)という薬とナブパクリタキセル(アブラキサン)という薬を併用する治療法です。これらの薬はガン細胞のDNA合成を妨げたり、細胞の分裂を妨げることによりガンの進行を抑えていくものです。これも先に説明したFOLFIRINOX療法と同じく1番目に推奨される治療法ですが、FOLFIRINOX療法に比べて高齢者でも安全にできると言われており、高齢の方の膵臓がんではこちらの治療が検討されます。
GnP療法では、1回60-90分程度(前投薬を含めると2時間程度)の点滴を外来で行います。これを基本毎週同じ曜日に3週間連続で行い、残り1週間をお休みとし4週間を一つの単位(1コース)として繰り返していきます。ただし、この薬も効果がある反面副作用もある程度ある治療のため、身体の状態、血液検査の結果などを診ながら適宜薬の量を変更したり、投与の回数、間隔を調整していきます。
Nal-IRI/FL療法
Nal-IRI/FL療法とはリポソーマルイリノテカン、レボホリナート、フルオロウラシル(5-FU)を組み合わせた療法です。この療法はゲムシタビン・ナブパクリタキセル併用療法を行ったものの腫瘍を抑えきれなかった場合などに行われ、イリノテカンを脂質の膜で包んだ薬剤を使用することにより、血液の中に薬剤が存在する時間を長くしたり、ガンに集まりやすくし、効果を高めています。
この治療では先述したFOLFIRINOX療法と同様にイリノテカンという薬が使用されているため、同じく遺伝子型(UGT1A1) によっては副作用が出やすく、薬の減量が必要であったり薬が使用できないこともあります。そのためFOLFIRINOX療法と同様に治療を始める前に血液検査でこの遺伝子を調べておく必要があります。
この治療は、外来で4時間ほどの点滴を行い、その後でフルオロウラシル(5-FU)を46時間かけて点滴で投与します。この治療を2週間おきに繰り返していきます。
ゲムシタビン単独療法
ゲムシタビン単独療法は第一選択のFOLFIRINOX療法やゲムシタビン・ナブパクリタキセル併用療法に比較し副作用が少なく、身体への負担も少ないとされています。FOLFIRINOX療法を行ったけれどガンを抑えきれなかった人の他、年齢や他の病気、身体の状態からこの2つの治療を行うことが難しい人もこの療法が選択肢の一つとして挙がります。
この治療法では1回30分程度(前投薬を含めて1時間程度)の点滴を週1回、3週連続で行い、その後の1週間をお休みとして4週間を一つの単位(1コース)として繰り返していきます。
S-1単独療法
S-1単独療法はゲムシタビン単独療法と同様に第一選択のFOLFIRINOX療法やゲムシタビン・ナブパクリタキセル併用療法に比較し副作用が少なく、身体への負担も少ないとされています。また、この治療法は飲み薬で行うため、ある程度状態が落ち着いているのであれば病院の受診回数も少なくすることができます。また、他の治療法と異なり、1回数時間の点滴を受ける必要もありません。ただし、自宅で薬を管理して治療していくため、薬の飲み忘れ等がある人には不向きです。
この治療では飲み薬を1日2回服用し、それを28日間連続で続けます。その後、14日間薬をお休みし、6週間を一つの単位(1コース)として繰り返していきます。
その他
膵臓がんの中には遺伝子変異などを伴うものがあります。遺伝子の変異を調べ、もしその変異があった場合、その異常のある部分に対して効果を発揮しガンの進行を抑える薬剤(オラパリブ、ペムブロリズマブ)もあります。ただし、もちろんこれらは遺伝子変異のある人にしか使えず、変異がある確率もどのようなものかにもよりますが数%程度です。
また、手術ができる人に対しても手術前に転移を抑えるための術前化学療法(GS療法)や術後の抗がん剤治療を行うこともあります。

