●終わりの見えない対応に「線引き」を示す意味
企業や団体が「カスハラへの対応方針」を公表し、「対応終了」「入場禁止」「法的措置」といった対応を明示することは、毅然とした態度を具体的に示すものとして評価できます。
従業員にとって、終わりの見えないカスハラ対応は大きな精神的負担となります。しかし、「これ以上の要求や暴言があれば対応を終了する」という明確な線引きが示されれば、その負担は軽減されます。
また、「自分が断っていいのか」と迷うこともなくなり、「会社の方針に沿って対応を終了します」と伝えることで、攻撃の矛先を個人ではなく組織へそらすこともできます。
●「歪んだ正義感」を持つ相手には限界も
一方で、方針を公表しただけで、カスハラを防げるわけではありません。
カスハラ加害者には「独自の正義感」を持つ傾向があります。その多くは身勝手で歪んだものですが、本人の中では揺るぎない信念になっています。
そのため、いくら合理的に説明しても、自らの正義感やマイルールに反する限り、受け入れられないことが少なくありません。
「カスハラはいけないことだが、自分は正しいことをしている」と考え、自分の行為がカスハラにあたると認識していないケースもあります。
俳優やスタッフをカスハラから守るためには、方針を対外的に公表するだけにとどまらず、その内容を実行できる組織的な体制を整えることが必要です。
【取材協力弁護士】
能勢 章(のせ・あきら)弁護士
カスハラ専門の弁護士。カスハラという言葉がない時代からBtoCの企業から依頼を受けて困難なカスハラ案件に数多く従事する。著作として『「度が過ぎたクレーム」から従業員を守る カスハラ対策の基本と実践』(日本実業出版社)がある。カスハラ対策及びカスハラ対応に関する情報を発信するサイト「正しいカスハラ対策で従業員を守る方法 - カスハラドットコム (kasuhara.com)」を運営している。
事務所名:能勢総合法律事務所
事務所URL:https://kasuhara.com/

