【その2】家康(松下洸平)の信長(小栗旬)に対する復讐心のぞかせるサプライズ展開に込めた思い
史実に縛られつつ、利用して創作する面白さ
――秀長は前半生の史料が少ないことから、ドラマの前半では比較的自由に描くことができた一方、今後は史料が増えてくる分創作の余地が狭まって、描きづらくなってきたということはありますか?
「たしかに史料が多くなって、今までやれていたことができなくなる不自由もあります。でも、1つのモチーフを史実のどこから切り取るかというやり方で物語を書いていくスタンスは最初から変わってないので、明白な史実が残っていれば、(6月7日放送の第22回に登場した兵庫・姫路の書寫山・圓教寺の柱に刻まれた『羽柴小一良(郎)』の落書きのように)逆にそれを利用して創作する面白さもあります。考えるのに時間はかかりますが、楽しめているのではないかと思っています」
――「敵は本能寺にあり」「是非もなし」というおなじみのフレーズが使われた一方で、信長が本能寺で舞ったとされる能の演目「敦盛」は描かれませんでした。本能寺の変以外の出来事も含めて、そうした定番の要素を取捨選択するときの基準はありますか?
「『敵は本能寺にあり』に関しては、明智光秀は本能寺にいなかったということが最近の研究でわかっていて、でもやっぱりあのセリフは言わせたいし、制作統括の松川(博敬)さんからも『絶対言わせてほしい』と頼まれていたので、どうやって光秀の気持ちを高ぶらせてあのセリフを言わせるかはすごく思い悩みました。でも本能寺の変に至る全体の流れのなかで、足川義昭(尾上右近)から届いた書状が偽物だと光秀もわかっているけれど、やっぱり義昭の再起をどこかで信じたかったという光秀の思いをセリフに込めたら面白いのではないかと考えて、『これは上意である』っていう言葉も付け足して、ああいうセリフにしました。取捨選択はもちろんしているのですが、やりたいことは全部やらせていただいたかなと思います」
――戦争や略奪の場面の暴力描写の苛烈さも印象的ですが、現代に世界中で起こっている戦争・紛争を意識しているところもありますか?
「そうですね。具体的にどこがということではありませんが、脚本のオファーをいただいたのが、ちょうどロシアがウクライナに侵攻し始めた頃だったので、どう描くべきかということは当初すごく考えました。でも、戦という理不尽をを受け入れざるを得なかった(戦国)時代を描くことで、1つのアンチテーゼになればという思いで今ここまで書いてきました。最後まで見終わった時に、戦国の世は現在まで地続きでつながっていて、何か今の人たちの目に1つの希望のように映るといいなという思いで書いてます」
「風雲!竹田城」の副題考えたのは…
――これまで執筆されてきたなかで、特に描くのが楽しかったお気に入りのエピソードは?
「どのエピソードも書いている時は苦しいんですが、役者さんやスタッフの皆さんが熱量を持ってそれを映像にしてくださるので、出来上がったものを見たら本当にどれも素晴らしくて、1つ選ぶのは難しいです。第4回「桶狭間!」(1月25日放送)も良かったし、人質になった藤吉郎(秀吉)を小一郎が救出する第6回「兄弟の絆」(2月8日放送)での仲野さんのお芝居も忘れられないです。市(宮﨑あおい)が浅井長政を介錯して物議を醸した第17回「小谷落城」(5月3日放送)も、僕的には全然悔いはない本当にすばらしい回になったと思っています。もちろん第27回「本能寺の変」も良かったし、小一郎が慶(吉岡里帆)を迎えに行く第19回「過去からの刺客」(5月17日放送)も『これ誰が書いたんだろう?』と思うくらい良かった(笑)。だから本当に選べない。まだ途中なんであんまりこういうことは言っちゃいけないとは思うんですが、僕、これ以上のものは多分今後書けないんじゃないかって正直思っていて…大傑作です!(笑)最後までこの気持ちでいけるように頑張りたいです」
――「おちょやん」で朝ドラの脚本を担当されていますが、朝ドラの経験が今作の執筆で生きたこと、あるいは感じた違いはありますか?
「書いてみて、朝ドラとは全然違いました。もちろん朝ドラと大河の持つ世界観や空気の違いはあるのかもしれないし、でもどちらも1話1話楽しめるように作りたいというスタンスは同じではあるんですが、朝ドラに比べたら1話が長く、なおかつ本数も多いのでそこに向き合うということでしょうかね。朝ドラはもう書き終わっているのでいい思い出になっていますが、「豊臣兄弟!」は書き終わってないので、まだ辛いというのがおそらく正直なところなのかなと思います(笑)」
――大河ドラマのタイトルそのままの第24回『軍師官兵衛』(6月21日放送)や、バラエティー番組『風雲!たけし城』によく似た第21回『風雲!竹田城』(5月31日放送)といった副題が話題になりましたが、これを考えたのは?
「それはですね、優秀なスタッフ(前述の松川氏)が考えてくださっているんで、もうお任せして僕も楽しみにしているんです(笑)」
――客観的に見ると、この先は豊臣(羽柴)が織田を乗っ取っていく物語になるわけですが、そういう非情な、負の部分はどう描かれていくのでしょうか?
「どんな人でも、白か黒かだけで割り切れる人っていない気がします。白になりたいと思っていても若干黒に染まることもあるじゃないですか。でも気持ちはやっぱり白でいたいとか、その逆もまた然りだと思うんです。そういうことをドラマの中にうまく落とし込みながら、結果としては織田家を乗っ取ってしまうわけですが、そこにも秀吉、小一郎を含めたいろいろな人たちのピュアな思いがちゃんと根っこにある――というふうに見せていけたらと思っています」
(おわり)

