「咳が止まらないけれど、コロナなのか風邪なのかわからない」と不安になる人は少なくありません。実は、コロナも風邪も同じウイルス感染症で共通する症状が多く、咳の特徴だけで見分けるのは困難です。さらに咳の原因は感染症だけではなく、咳喘息やアトピー咳嗽、後鼻漏、胃食道逆流症などの病気が隠れていることもあります。咳が1〜2週間以上続く場合や、息苦しさ・胸の痛みを伴う場合は受診の検討が必要です。咳が出る仕組みから原因の見分け方、受診の目安まで、ひろせクリニックの廣瀬達城先生に聞きました。

監修医師:
廣瀬 達城(ひろせクリニック)
1995年福井医科大学(現・福井大学医学部)卒業後、金沢大学医学部附属病院に勤務。その後、福井県済生会病院、北陸中央病院、国立療養所金沢若松病院(現・国立病院機構 医王病院)などを経て、再び金沢大学医学部附属病院、公立能登総合病院、辰口芳珠記念病院、金沢社会保険病院(現・金沢病院)、金沢市立病院、国立病院機構金沢医療センターにて診療に従事。日本内科学会認定医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医。
咳って何?どんな仕組みで出るの?
編集部
咳とはどのような反応なのでしょうか?
廣瀬先生
気道に入った異物や分泌物を外に排出するための防御反応です。ウイルスや細菌、ほこりなどの刺激によって気道が敏感になると反射的に起こります。体を守るための大切な働きですが、長引く場合は何らかの疾患が背景にある可能性があります。
編集部
咳が出る原因にはどのようなものがありますか?
廣瀬先生
大きく感染症とそれ以外に分けられます。感染症では風邪や新型コロナウイルス感染症が代表的ですが、肺炎や結核など注意が必要な疾患が隠れているケースもあります。原因によって治療が大きく異なるため、原因を見極める必要があります。
編集部
感染症以外の要因で咳が出るケースもあるのですか?
廣瀬先生
あります。咳喘息やアトピー咳嗽(がいそう:アレルギーが原因で起こる乾いた咳)、後鼻漏(こうびろう:鼻水がのどの奥に流れ落ちる症状)、胃食道逆流症などは、風邪の延長と考えて見過ごされがちですが、治療方針が大きく変わってきます。特に咳だけが続く場合は感染症とは異なる原因が関与しているケースも多く、適切な評価と治療が必要です。
編集部
痰そのものにも違いはありますか?
廣瀬先生
そうですね。痰の有無や咳症状の持続期間などから、ある程度原因を推測できます。たとえば、痰を伴う場合は気道に炎症や分泌物が多い状態で、感染症や慢性気管支炎などが考えられます。一方で乾いた咳が続く場合は、気道の過敏性が関与しているケースもあり、喘息や咳喘息、アトピー咳嗽などが疑われます。ただし、上記はあくまで可能性であり、症状だけで原因が決まるわけではありません。
コロナ? 風邪? どう考えればいいの?
編集部
咳の持続期間による違いについても教えてください。
廣瀬先生
2〜3週間以内の咳は急性咳嗽(きゅうせいがいそう)とされ、感染症が原因であるケースが多いです。ただし、2週間以上続く場合には、感染症以外の原因も考える必要があります。一方で、3週間以上続く遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう)や、8週間以上続く慢性咳嗽(まんせいがいそう)では、咳喘息やアトピー咳嗽、副鼻腔気管支症候群など多様な疾患が関与するケースがあり、専門的な診断と治療が必要です。耳鼻咽喉科領域の疾患が関係するケースもあり、連携が求められる場合もあります。
編集部
ほかに、咳症状を考える際のポイントはありますか?
廣瀬先生
発熱や全身のだるさ、のどの痛みなどの全身症状が強い場合や、周囲に感染者がいる場合は、感染症の可能性を考えます。ただし症状だけでの判断は難しく、典型的でないケースも多いため、あくまで目安として捉え、必要に応じて医療機関で評価や検査を受けてください。
編集部
咳が出たとき、コロナと風邪は見分けられるのでしょうか?
廣瀬先生
症状だけで明確に区別するのは困難です。いわゆる風邪も新型コロナウイルス感染症もウイルス感染症であり、発熱やのどの痛み、倦怠感など共通する症状も多く、咳の特徴だけでは判断できません。周囲の状況や症状の経過を踏まえ、必要に応じて検査や医療機関での評価を受ける必要があります。
編集部
市販薬で様子を見てもよいのでしょうか?
廣瀬先生
軽症であれば市販薬で経過を見るケースもありますが、1〜2週間程度経っても改善しない場合や繰り返す場合は注意が必要です。原因によって治療が異なるため、漫然と使用を続けるのではなく、一定期間で見直し、必要に応じて医療機関で評価を受けてください。

