小4男児がサッカー遠征先の「海」で死亡、児童17人を「大人1人」で見るのは不可能?引率者の法的責任は

小4男児がサッカー遠征先の「海」で死亡、児童17人を「大人1人」で見るのは不可能?引率者の法的責任は

●過去の裁判でも分かれる判断

実際、引率中の水難事故をめぐる裁判では、事案ごとに結論が分かれている。

奈良地裁は2015年、野球チームのレクリエーションで海水浴場を訪れた中学2年生が溺れて死亡した事故について、代表者や副代表の監督責任を否定した。

また、東京地裁は1972年、臨海学校の遊泳訓練中に小学5年生が死亡した事故で、児童を泳力ごとにグループ分けし、それぞれに監視者を配置したほか、陸上にも監視者を置くなど十分な監視体制を整えていたとして、引率教職員らの責任を否定している。

一方、札幌地裁は1978年、公立中学校の臨海水泳指導中に生徒が溺れた事故について、使用する海域の水深や海底の状況を十分に調査せず、監視義務も尽くしていなかったとして、引率教員側の過失を認めた。

上野弁護士は「監視体制や事前の安全確認、子どもの泳力の把握などが十分だったかによって、裁判所の判断は分かれています」と話す。

●痛ましい水難事故を繰り返さないために

では、こうした事故を防ぐには、どのような点に注意すべきなのか。

今回の事故を受け、上野弁護士は、海ならではの危険性を十分に認識する必要があると指摘する。

「海はプールと違って潮の流れがあり、急に深くなる場所もあります。引率者は、海水浴場の特性や危険箇所を事前に確認しておくことが重要です」

さらに、「子どもが『泳げる』と言っていても、背が立つ場所でしか泳いだ経験がないケースもあります。海で泳いだ経験があるのか、足の届かない場所でも泳げるのかなど、泳力を事前に確認することも大切でしょう」

海へ出かける機会が増える夏休み。上野弁護士は「監視体制や事前の安全確認を徹底することが、水難事故を防ぐ第一歩になります」と話している。

【上野園美弁護士略歴】

青山学院大学経済学部経済学科卒業。2000年10月司法修習終了(53期)。2005年シリウス総合法律事務所サブパートナーに。2006年12月公認会計士登録。豊島岡女子学園監事。著書に「事例解説 介護事故における注意義務と責任」(共著・新日本法規)、「事例解説 保育事故における注意義務と責任」、(共著・新日本法規)「事例解説 リハビリ事故における注意義務と責任」、(共著・新日本法規)「交通事故事件処理の実務-Q&Aと事例-」(共著・新日本法規)、「アウトドア六法」(共著・山と渓谷社)など。

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