「手術には入院が必要」と思われがちですが、耳鼻科では日帰りで受けられる手術が少なくありません。薬で改善しない鼻づまりに対する鼻中隔矯正術や下鼻甲介の手術、慢性副鼻腔炎に対する内視鏡下鼻・副鼻腔手術のほか、慢性中耳炎などでは耳の穴から内視鏡を入れて行うTEES(経外耳道的内視鏡下耳科手術)も広がっています。ただし日帰り手術は「簡単な手術」ではなく、出血や感染などのリスクがあり、術後は自宅でのセルフケアが重要です。対象となる症状や術式、注意点について、耳鼻咽喉科吉田クリニックの吉田尚生先生に聞きました。
※2025年10月取材。

監修医師:
吉田 尚生(耳鼻咽喉科吉田クリニック)
2005 年関西医科大学 医学部卒業、関西電力病院 初期研修医。2007 年関西電力病院 耳鼻咽喉科後期研修医。京都大学耳鼻咽喉科頭頸部外科学教室入局。関西電力病院耳鼻咽喉科、大阪赤十字病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科、大阪赤十字病院 アレルギーセンター(兼務)、大阪赤十字病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 医長、大阪赤十字病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科副部長などを経て2025年耳鼻咽喉科吉田クリニック院長。
鼻の日帰り手術にはどのような種類がある? 症状に合わせて紹介
編集部
鼻の日帰り手術には、どのようなものがありますか?
吉田先生
代表的な手術には、鼻づまりに対する「鼻中隔矯正術」、下鼻甲介の粘膜を小さくする「下鼻甲介粘膜焼灼術(かびこうかいねんまくしょうしゃくじゅつ)」、下鼻甲介の骨などを切除する「粘膜下下鼻甲介骨切除術(ねんまくかかびこうかいこつせつじょじゅつ)」、慢性副鼻腔炎や鼻茸(はなたけ)に対する「内視鏡下鼻・副鼻腔手術」などがあります。疾患や症状に合わせて適切な術式を選択します。
編集部
たとえば強い鼻づまりがある場合、どの手術が適応になりやすいのでしょうか?
吉田先生
薬物療法で改善しない強い鼻づまりには、鼻中隔矯正術が適応されやすい傾向にあります。片側あるいは両側の鼻づまりが続く原因として、鼻中隔(左右の鼻腔を隔てる壁)の弯曲や下鼻甲介の肥大が挙げられるためです。鼻中隔が曲がっていることで鼻の通りが悪くなっている場合は、曲がっている部分の鼻中隔軟骨を切除し、まっすぐに整える手術を行います。
編集部
そのほかのタイプの鼻づまりには、どのような治療法が適しているのでしょうか?
吉田先生
アレルギー性鼻炎や慢性鼻炎による鼻づまりには、下鼻甲介レーザー焼灼術や粘膜下下鼻甲介骨切除術が適しています。これらの手術は、鼻の穴の側面にある下鼻甲介という粘膜が腫れ上がっている際に行う治療です。特に粘膜下下鼻甲介骨切除術は、鼻腔内の骨と肥大した粘膜を部分的に切除するため鼻の通りがよくなり、頑固な鼻づまりの解消が期待できます。
編集部
副鼻腔炎では、どのようなときに日帰り手術を考えるのですか?
吉田先生
内服薬や点鼻薬、鼻洗浄などの治療を続けても十分な改善が得られない場合に、内視鏡下鼻・副鼻腔手術を検討します。対象となるのは、鼻づまり、黄色い鼻水、後鼻漏(こうびろう=鼻水がのどに回る症状)、においの低下、顔面の圧迫感などが続く人です。手術では、内視鏡を用いて副鼻腔の通り道を広げ、溜まった膿や鼻茸を取り除きます。
耳の日帰り手術の種類と適応疾患
編集部
耳の日帰り手術には、どのようなものがありますか?
吉田先生
代表的な手術として、鼓膜形成術や鼓室形成術が挙げられます。慢性中耳炎や外傷などで鼓膜に穴(穿孔)が残ると、難聴や耳だれ、感染を繰り返す原因となるためです。手術では顕微鏡や内視鏡を使い、耳の後ろや耳の周囲から採取した組織を移植して鼓膜の再生を促します。病変の広がりや術式によりますが、近年は多くの患者さんが日帰り手術を受けています。
編集部
内視鏡でも行えるのですね。
吉田先生
はい。従来は顕微鏡を使う手術が一般的でしたが、近年では医療技術の進化に伴い、内視鏡でも行えるようになりました。内視鏡を使った耳科手術は、TEES(経外耳道的内視鏡下耳科手術)と呼ばれます。
編集部
内視鏡を使う分、体への負担が少なくなるのですか?
吉田先生
そのとおりです。耳の穴から細い内視鏡を挿入してモニター画像を見ながら操作するため、体への負担を軽減できます。従来の顕微鏡を用いた手術では、耳の後ろを切開したり、外耳道の皮膚を広く剥がしたりして病変部に到達していました。一方、TEESは内視鏡を用いるため、顕微鏡では見えにくかった奥の部分まで拡大したクリアな視野で確認でき、より精度の高い手術が可能です。
編集部
TEESは、どのような疾患が対象になるのですか?
吉田先生
鼓膜穿孔(こまくせんこう)を伴う慢性中耳炎をはじめ、真珠腫性中耳炎、滲出性(しんしゅせい)中耳炎、癒着性中耳炎などが対象です。ただし、病変の広がりによっては適応が限られるため、内視鏡での対応が難しい場合は顕微鏡を用いて手術を行います。
編集部
そのほか、どのような日帰り手術がありますか?
吉田先生
ほかには、鼓膜切開・鼓膜チューブ留置術があります。鼓膜に小さな穴を開けて中耳の液を排出し、必要に応じてチューブを入れて換気を保つ方法です。これらの処置は、滲出性中耳炎の患者様や、中耳炎を繰り返す人に多く選択されています。

