娘の一言がきっかけで状況は一変
「そんなある夏の日、義父がいつものようにほぼ全裸に近い格好で居間に現れた瞬間……夢乃がじっと義父を見上げて首をかしげながら、無邪気にこう言ったんですよ」
「じいじって『はだかのおうさま』なの? でもここ、えほんのせかいじゃないからへんだよね?」と。その場にいた大人たちは思わず息をのみ、空気は一瞬で凍りついて時間が止まったかのようになりました。「義父は言葉を失い、周囲の視線に気づくと、何も言わずにそそくさと自室へ引っ込んでいったんですよね」
しばらくして戻ってきた義父の姿を見て、彩芽さんは思わず目を見張りました。そこには、きちんと服を着た義父が少し恥ずかしそうな顔をして立っていたそう。
それからどうなった?
「なぜかそれ以来、義父は薄着を改め、訪問時にはエアコンもつけてくれるようになったんですよね」大人がどれだけ言葉を尽くしても動かなかった義父でしたが、悪意のない子どものたった一言が、凝り固まった価値観をあっさり溶かしてしまったようでした。
それ以来、義父の家は夏も冬も過ごしやすい空間になりました。夢乃ちゃんが何事もなかったかのように安心して遊び回れるようになったことで、彩芽さんもようやく心からホッとできるようになったそう。
「思いがけない形で訪れた、家族の小さな変化でしたね。子どもの素直なひと言が、義父の心を解き、家族の空気をふわりとやさしく変えてくれた……。夢乃のお陰で私のストレスもなくなり、本当に感謝しています」と微笑む彩芽さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop

