『アトピー治療』の“次の一手”をご存じですか? ステロイドの正しい使い方も皮膚科医が解説

『アトピー治療』の“次の一手”をご存じですか? ステロイドの正しい使い方も皮膚科医が解説

「ステロイドはできれば使いたくない」「いつまで塗り続ければいいの?」——。アトピー性皮膚炎の治療で、そう不安を抱える人は少なくありません。しかしステロイド外用薬は、部位や症状に合った強さで正しく使えば、炎症を抑える基本の治療です。怖がって使わずにいると、かえって悪化・慢性化を招くこともあります。近年は新しいタイプの外用薬が3種類登場したほか、生物学的製剤やJAK阻害薬という「次の一手」も加わり、選択肢は着実に広がっています。ステロイドの正しい使い方と新しい治療について、医療法人社団恒潤会の山本亜偉策先生に聞きました。

※2026年6月取材。

山本 亜偉策

監修医師:
山本 亜偉策(大井町駅前皮ふ科)

2001年昭和大学(現・昭和医科大学。以下同)医学部医学科卒業。昭和大学大学院医学研究科修了(学位取得)。昭和大学病院(現・昭和医科大学病院)、昭和大学横浜市北部病院(現・昭和医科大学横浜市北部病院)、東京都立大塚病院を経て現職。医学博士、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、昭和大学医学部皮膚科兼任講師。

アトピー治療においてステロイド外用薬は有効か

アトピー治療においてステロイド外用薬は有効か

編集部

アトピー性皮膚炎の治療で、ステロイド外用薬は本当に有効なのでしょうか?

山本先生

はい、有効です。ステロイド外用薬は、現在表れている赤みやかゆみを速やかに抑えるための基本的な治療です。日本皮膚科学会のガイドラインでも、「ステロイド外用薬の有効性と安全性は多くの臨床研究で検討されている」と述べられており、炎症を鎮める中心的な外用治療として位置づけられています。副作用を気にする人も少なくありません。しかし、怖がって必要な時期に使わないと炎症が長引き、かえって悪化や慢性化につながる恐れがあります。大切なのは、部位や症状に合った強さで正しく使う点です。

編集部

「ステロイドは怖い」という声もありますが、どう考えればよいですか?

山本先生

医師の指示のもと、必要な部位へ必要な期間の使用が重要です。漫然と自己判断で使い続けるのではなく、適切に使えばアトピー性皮膚炎の炎症をしっかり抑える有効な薬です。一方で、塗布量が少なすぎたり、症状が残っているのに早くやめすぎたりすると、十分な効果が得られず再燃を繰り返しやすくなります。

編集部

症状がよくなったら、ステロイドはすぐやめてもよいのでしょうか?

山本先生

症状が落ち着いたあとでも、再燃を防ぐ治療が必要な場合があります。見た目が改善しても、皮膚の中には炎症が残っている可能性があるためです。日本皮膚科学会のガイドラインでは、再燃を繰り返す患者さんに対し、炎症が治まったあとにステロイド外用薬や非ステロイド外用薬を週2回程度使用し、寛解(かんかい)維持を目指す治療法が紹介されています。これは症状がよくなった後のぶり返しを防ぐ治療法で「プロアクティブ療法」といいます。

編集部

治療薬にはステロイド以外の種類もありますが、ステロイドとどう使い分けるのですか?

山本先生

炎症が強い時期は、ステロイド外用薬でしっかり炎症を抑えるのが基本です。炎症が治まったあとの維持期や、皮膚が薄い顔や首などの部位には、ステロイド以外の外用薬を組み合わせていきます。

編集部

具体的に、どんな治療薬を用いるのですか?

山本先生

これまで維持期の主役はタクロリムス軟膏でした。しかし近年は、軟膏の「デルゴシチニブ(外用のJAK阻害薬)」や「ジファミラスト(PDE4阻害薬)」、クリームの「タピナロフ(AhR作動薬)」といった新しいアプローチの外用薬が次々と登場し、選択肢が広がりました。ステロイドのみで完結させず、炎症の強さや部位、患者さんの使いやすさに合わせて外用薬を組み合わせ、再燃しにくい肌を維持していくのが実際の治療です。

ステロイド以外の選択肢である生物学的製剤やJAK阻害薬とは

ステロイド以外の選択肢である生物学的製剤やJAK阻害薬とは

編集部

ステロイド外用薬以外には、どのような選択肢がありますか?

山本先生

抗アレルギー薬などの内服療法や、紫外線の一種を皮膚に当てて免疫反応を落ち着かせる光線療法(紫外線療法)などがあります。近年は、生物学的製剤や内服(飲み薬)のJAK阻害薬も重要な選択肢です。ガイドラインでも、「外用療法を適切に行っても寛解に導入できない中等症以上の難治例では、生物学的製剤やJAK阻害薬を外用療法に追加して検討する」とされています。生物学的製剤やJAK阻害薬は、最初から全員に使う薬ではありません。従来治療で十分改善しない人の次の一手として位置づけられています。

編集部

生物学的製剤とはどんな薬ですか?

山本先生

アトピー性皮膚炎の炎症やかゆみに深く関わる特定のサイトカインを狙って抑える注射薬です。中等症から重症のアトピー性皮膚炎に対する有力な全身治療として位置づけられており、現在では長期管理で重要な選択肢になっています。

編集部

サイトカインとはなんですか?

山本先生

かゆみや炎症を引き起こすメッセージ物質を指します。アトピー性皮膚炎の人は、皮膚のバリア機能が低下しています。そこにアレルギーを誘発する物質や刺激が入り込むと免疫細胞が過剰に反応し、かゆみや炎症が起こります。生物学的製剤は、原因物質そのものをピンポイントでブロックする薬です。

編集部

高い効果が期待できるのですか?

山本先生

はい、特定のサイトカインをピンポイントで抑え、皮膚の乾燥やかゆみ、発疹の原因となる物質に働きかけるため、とくに強いかゆみに対しても効果が期待できます。効果が長続きしやすいとされ、定期的な通院と経過観察を行いながら、じっくり治療を進めたい人に適した選択肢の一つです。

編集部

一方、内服のJAK阻害薬とはどのような薬なのでしょうか?

山本先生

炎症やかゆみに関わるメッセージ物質の情報伝達を、細胞内で抑える薬です。

編集部

詳しく教えてください。

山本先生

サイトカインが細胞の受容体に結合すると、受容体のすぐ内側にあるJAK(ヤヌスキナーゼ)と呼ばれるタンパク質が活性化します。これにより炎症や免疫に関する特定の遺伝子が働きだし、かゆみや炎症などが引き起こされます。JAK阻害薬はJAKの働きを阻害するため、かゆみや炎症などを抑えられます。

編集部

JAK阻害薬を飲めばかゆみが出なくなるのですか?

山本先生

個人差はありますが、JAK阻害薬の使用でかきむしりの悪循環を断ち切り、速やかに抑える作用が期待できます。ただし、免疫機能が低下する場合があるため、投与前や投与中の検査で安全を確かめながら使う必要があります。

編集部

新しい治療を受けるときに、注意すべき点はありますか?

山本先生

すべての患者さんに必要なわけではない点に留意する必要があります。重症度、これまでの治療歴、年齢、合併症などを総合し、適切な使用が大切です。また、JAK阻害薬は安全確認の検査が必要になる場合があり、生物学的製剤も定期的な通院と経過観察が重要です。

配信元: Medical DOC

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