内容への受け止めは?
編集部
杏林大学の研究グループらが発表した内容への受け止めを教えてください。
中路先生
コーヒーと生活習慣病の関わりについては、これまで大規模な疫学調査を通じて多くの知見が得られてきました。しかし、「実際に体の中で何が起きているのか」という部分については、まだ十分に解明されていないのが現状と考えます。その意味で今回の研究は、「腹部の血流」という具体的な生理反応に注目し、コーヒーが体に及ぼす影響を目に見えるかたちで示した点に価値があると感じています。とりわけ、被験者に負担をかけない超音波検査を用いてリアルタイムに血流の動きを追跡したという手法は、身近な飲み物が循環器系に与える影響を探るうえで、今後の研究の土台となりうるものと考えます。
「腸や肝臓への血流が一時的に減った」ということのみに注目すると、体に悪い変化が起きているのではないかと心配する人もいるかもしれません。ただ、この現象はあくまで飲用直後にみられる短時間の生理的な反応であり、体を傷めるような変化とは考えにくいものです。むしろ、コーヒーに含まれるカフェインやクロロゲン酸といった成分が、血管や自律神経に働きかけたことで生じた、体としてごく自然な応答ととらえるのが妥当だと思われます。加えて、日ごろカフェインをあまり口にしない人ほど反応が強く現れたという点も見逃せません。これは、普段の摂取習慣によって体の反応の出方が変わることを物語っており、コーヒーとの付き合い方に個人差があることを改めて実感させてくれる結果です。
もっとも、今回の被験者は健康な若い男性32人に限られていたので、この結果を女性や高齢の人、あるいは糖尿病や脂肪肝といった生活習慣病を抱えている人にそのまま当てはめることはできません。
また、飲用直後に生じる血流の一時的な変化が、長い目で見たときの健康効果とどう結びついていくのかという道筋についても、これから丁寧に解き明かしていく必要があります。こうした研究をきっかけに「コーヒーは体によいか悪いか」という単純な二択で語るのではなく、「誰が」「どのようなタイミングで」「どのくらいの量を飲んだときに」「どんな反応が起きるのか」という、より立体的な視点でコーヒーを見つめ直していくことが求められる時代に入ったと感じています。今回の結果に一喜一憂されるのではなく、ご自身の体調や日々のリズムに耳を傾けながらコーヒータイムを楽しんでください。
編集部まとめ
コーヒーには、カフェインやポリフェノールなど、健康維持に役立つ成分が含まれています。今回の研究では、コーヒーを飲むことで腸や肝臓につながる血流が変化することが分かりました。健康効果を期待して飲み過ぎるのではなく、自分の体調に合った量を取り入れることが大切です。毎日の習慣として楽しみながら健康管理に役立てましょう。
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