健康診断で「膵臓に小さな嚢胞(のうほう/液体がたまった袋状の変化)がありますが、心配いりません」と言われた経験がある人もいるのではないでしょうか? 実は、その「心配のない」とされてきた小さな嚢胞に、将来がんにつながる可能性が潜んでいることが、研究で明らかになりました。この内容について中路先生に伺いました。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
研究グループが発表した内容とは?
編集部
日本大学医学部附属板橋病院臨床検査部の研究員らが発表した内容を教えてください。
中路先生
日本大学医学部附属板橋病院臨床検査部の田澤佑季氏の研究で、膵臓にできる小さな嚢胞について新たな知見が示されました。2026年6月26~28日に横浜市西区で開かれた第65回日本消化器がん検診学会総会での報告です。膵嚢胞は膵臓がんのリスク因子とされますが、現在の指針では最大径5mm未満は「良性」とされ経過観察の対象外です。しかし、2019年9月〜2025年6月に見つかった5mm未満の94例をCTやMRCP(磁気共鳴胆管膵管撮影)、EUS(超音波内視鏡検査)で調べたところ、約4分の1がIPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍/将来がん化しうる腫瘍)と診断されました。超音波検査で経過を追った67例では、42%でサイズが大きくなり、7%で数が増え、10mmを超える例もありました。これらの結果から、5mm未満でも経過観察が必要な可能性があり、「良性」ではなく、もう一段階注意が必要な区分に見直すべきだとの提案がなされています。
膵臓がんのリスク因子とは?
編集部
今回のテーマに関連する膵臓がんのリスク因子について教えてください。
中路先生
膵臓がんのリスク因子には、家族歴や合併疾患、生活習慣などが関わっています。膵臓がんの家族歴がある人や、家族性膵癌症候群など遺伝性の病気を持っている人はリスクが高くなります。また、糖尿病や慢性膵炎、遺伝性膵炎、IPMN、膵嚢胞、肥満といった病気を持っている人も注意が必要です。さらに、喫煙や大量飲酒といった生活習慣もリスクを高めることが分かっています。これらの危険因子を複数持っている人は、膵臓がんが発生しやすい状態にあると考えられますので、定期的に検査を受け、早期発見・早期治療につなげるよう心がけましょう。
