初夏の夕暮れ、ある駅改札での出来事です。何げなく通り過ぎようとした相手の外見から、私は勝手に不安を覚えてしまいました。ところが、その人が口にした言葉を聞いた瞬間、自分の中にあった先入観に気付かされることになったのです。
見た目だけで身構えてしまった私
その日、駅の改札近くを歩いていると、路線図の前に、背の高い青年が立っているのが目に入りました。見事なアフロヘアに褐色の肌、ゆったりとしたストリート系の服装。スマートフォンを片手に、どこか困ったようにたたずんでいました。
遠目に見た私は、無意識のうちに「外国の方かもしれない」「英語で話しかけられたらどうしよう」と身構えてしまいました。さらに、少し迫力のある外見から「怖そう」とまで感じ、足早にその場を通り過ぎようとしたのです。すると、その青年と目が合いました。
耳に飛び込んできた丁寧な言葉
青年は深く頭を下げ、私に声をかけました。
「突然すみません。お忙しいところ恐れ入りますが、少しよろしいでしょうか」
耳に飛び込んできたのはとても丁寧な日本語でした。しかも、まるで仕事の場で使うようなきちんとした敬語で、私が勝手に抱いていた不安は一瞬で吹き飛びました。話を聞くと、スマートフォンの電波が悪く、地図が表示されずに困っているとのことでした。私は慌てて目的の出口への道順を説明しました。
すると青年は、「ご丁寧にありがとうございます。お気を付けて」と爽やかな笑顔でお礼を言い、その場を去っていきました。

