「ママのこと、もういじめないで」
「ですが次の瞬間、優馬は義母を真っすぐ見て『ママのこと、もういじめないで』と言ったんですよ。私は驚いて、一瞬呼吸を忘れてしまいましたね」振り返った優馬くんの表情は、いつもの甘えん坊な4歳児の顔ではなく、必死に母親を守ろうとしているような、こわばった顔をしていました。
「『ママ、いつも頑張ってるよ。ばあばはいつもイヤなこと言うもん。あと顔がこわい……』と優馬が必死に伝えようとすると、義母の顔から笑みが消えました。そして『いい加減にしなさい!』と、ヒステリックな鋭い声が部屋中に響き渡ったんです」
その瞬間、優馬くんの身体がビクッと震え、加奈子さんの後ろへ隠れます。「義母は怒りで鬼のように顔を真っ赤にして頭を掻きむしっていましたが、私は優馬の背中をゆっくり撫で『大丈夫だよ。ママとお散歩行こうか』と、義母を置いて一緒に外に出てしまいました」
義母は怒りに任せて何かを言おうとしていましたが、孫の手前、必死に我慢している様子だったそう。
孫に拒絶され、義母が失ったもの
「それ以来、義母が来ても優馬は近づかなくなりました。好物のお菓子を差し出されても、すぐ私の後ろに隠れてしまい、無理に距離を詰めようとすればハッキリと拒むようになったんです」義母は次第に焦り始め、以前のような強気な態度ではなく、どこか下手に出るように優馬くんへ話しかけるようになりました。
「義母は『孫が可愛い』と言いながら、結局は自分の思い通りにしたいだけだったのかな? と思います。私を下げる言葉も、やり方に口を出すのも、孫のためというより、ただ自分が正しいとアピールしたかっただけなのかもしれません」
自分のやり方を受け入れ、自分に従う家族を見て安心したかった。あの怒鳴り声は、その本音が剥き出しになった瞬間だったのでしょう。
「でも優馬はちゃんと分かっていたんです。優しさと、そうじゃないものの違いを。あの瞬間、私は優馬に救われたし、私はもっと優馬をちゃんと守ってあげなくちゃと強く思いました」と微笑む加奈子さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop

