筆者の知人Mは毎日のようにMの家の前で立ち止まる女性に不安を感じていましたが、ある日思い切って声をかけたことで、その女性が抱えていた思いを知ることになったのです。
「また来てる……」
数年前の梅雨の時期のことです。毎日のように、私の家の前で立ち止まり、庭のほうをじっと見つめている女性がいました。
最初は通り道でたまたま足を止めているだけだと思っていました。でも、何度も同じ姿を見かけるうちにだんだん気になるようになりました。
自宅を見られているような気がして、窓越しに女性の姿を見つけるたび、「また来てる……」と防犯面も含めて不安を感じていたのが本音です。
アジサイに込められた思い
ある日、女性が家の前にいるところへちょうど帰宅しました。
思い切って声をかけてみると、女性は少し申し訳なさそうに頭を下げながら言いました。
「お庭のアジサイを見ていたんです」
話を聞くと、そのアジサイは数年前に亡くなったお母さまが大好きだった花なのだそうです。母親を亡くしてからアジサイを見るたびに思い出し、つい足を止めてしまうのだと教えてくれました。
その言葉を聞いた瞬間、事情も知らないまま勝手な思い込みで警戒していたことに、申し訳ない気持ちになりました。

