その日、小さなお客様が筆者に教えてくれたのは、大人になるほど難しくなることでした──。
涙目の男の子が握りしめていたもの
ある日、私が働いていた喫茶店に、小学校低学年くらいの男の子がお母さんと一緒に入ってきました。男の子は涙目でうつむきながら、小さな声で話しかけてきました。手には、スティックシュガーが8本握られていました。
「昨日、このお店のテーブルにあった砂糖を持って帰ってしまいました」
震える声でそう言うと、ペコリと頭を下げ、「ごめんなさい」と泣きながら砂糖を差し出しました。甘いものが食べたくて持ち帰ったものの、お母さんに見つかり、一緒に謝りに来たとのことでした。続けて、お母さんも頭を下げて言いました。「本当に申し訳ありません」
「正直に話してくれてありがとう」
私は男の子に言いました。
「お店の物はお客様みんなのために置いてあるものだからね」
そしてこう続けました。
「正直に話してくれてありがとう。謝りに来るの、すごく勇気がいったよね」
涙でいっぱいだった男の子も、安心したような表情を見せてくれました。

