私の父は2000年に84歳で、母は2010年に90歳で亡くなりました。父は寡黙で、人の話をよく聞く人でした。母もやさしく、まじめな性格。父が亡くなってから数日後、私はそれまでなかなか聞けなかった両親の夫婦関係について、母に尋ねたことがあります。そこで返ってきた母の言葉は、私にとって意外なものでした。
父が亡くなった後、母に聞いたこと
父は口数が少ない人でしたが、家の中では母とよく夫婦喧嘩をしていた記憶があります。私が幼いころのことですから、詳しい事情まではわかりません。ただ、その様子を見ていた私は、心のどこかで「父は母に手を上げたことがあったのではないか」と思い込んでいました。
父が亡くなってから数日後、私は思い切って母に「母さんは父と喧嘩したとき、叩かれたことがあるんでしょ」と尋ねました。すると、母から返ってきたのは、私が想像していたものとはまったく違う言葉でした。
母の返事に知った父の一面
母は静かに「一度もないよ」と答えました。その言葉を聞いたとき、私は少し驚きました。父は大正生まれで、昔気質なところもある人でした。私の幼いころには夫婦喧嘩をしていた印象もあったため、勝手に「きっとそういうこともあったのだろう」と思っていたのです。
しかし、母の返事を聞き、私は改めて父のよいところを知った気がしました。寡黙で多くを語らない父でしたが、母に対して越えてはいけない一線を守っていたのだと思うと、胸の中に清々しい気持ちが広がりました。

