〈効率化ではなく、給食を止めないための戦略的な選択肢〉
メディカデリ社の松崎文孝氏
福元氏は、完調品のメリットとして、工数削減、安定した提供、光熱水費の抑制などを挙げる一方、デメリットとして、食物アレルギーへの対応、食種展開の難しさ、発注業務の煩雑さ、冷凍保管庫の確保などを挙げた。
そのうえで、「完調品のメリットとデメリットを十分に理解したうえで厨房設計を考えてほしい。完調品を導入すればすべての課題が解決するわけではない。いかに適切に活用するかが重要だ。導入は厨房設計や運用構築の準備段階から検討することが望ましく、効果的に活用できれば、厨房設備の初期投資や人件費の抑制にもつながる可能性がある」と述べた。
また、「人材不足により、給食会社の撤退はどの病院でも起こりうる。物価や人件費が上昇する中で、経費削減のみを目的とした給食会社の変更は現実的ではない。経費だけに目を向けるのではなく、協力会社との信頼関係を築きながら改革を進めることが重要だ。365日、1日3食を欠かさず提供し続けることは決して当たり前ではない。だからこそ、感謝と謙虚さを忘れてはならない」と呼びかけた。
セミナーに登壇したメディカデリ社の松崎文孝氏も、完調品について、「単なる効率化ではなく、給食を止めないための戦略的な選択肢として捉えてほしい」と補足した。さらに、「給食会社に任せきりにするのではなく、限られた人材、冷凍完調品、再加熱機器の特性を生かした厨房設計と運用へ移行していくことが重要だ」と話した。
〈製造と食事提供の分業は不可欠〉
帝塚山大学名誉教授の河合洋見氏
セミナーの座長を務めた帝塚山大学名誉教授の河合洋見氏は、「病院給食の課題は多いが、一番は人がいなくなることだ。病院給食は労働集約型の産業だから人がいて成り立つものであり、逆に言えば、人がいなければ成立しない。持続可能なものにするためには、製造と食事提供の分業が不可欠。その1つのキーワードが完調品である」と従来の提供システムからの脱却を提案する。
「しかし、その完調品を使おうにも、従来の厨房には完調品を置けるほど冷凍庫にキャパシティがない。導入する場合は、完調品を使うことを前提にした献立設計と共に厨房環境の整備、作業導線など、厨房全体の改革を関係者と共に進めてほしい」と呼びかけた。
医療関連サービス振興会の委託率調査によると、病院の7割が給食調理業務を外部委託している。その多くの現場では、いくら募集をかけても人がとれないことから、常に限られた人材でギリギリ回しているところが少なくない。
病院給食の提供停止は、そのまま地域医療機能の停止につながりかねない。地域医療を守るためにも、時代に即した病院給食改革を進めることが全国の医療機関に求められている。

