年齢とともに増える膝や関節の痛み。その治療の選択肢の一つとして、近年一般の人にも広がっているのが、自分の血液から血小板を多く含む成分を取り出し、痛む関節に注射する「PRP療法」です。血小板に含まれる成長因子が傷んだ組織の修復を後押しし、炎症を和らげる方向に働くと考えられています。すり減った軟骨を元に戻すのではなく、炎症の悪循環を和らげて症状の軽減を図る治療で、効果を実感するまでに数週間かかることもあります。仕組みや向いている人、注意点について、柿の木坂整形外科クリニックの蓬󠄀田翔太先生に聞きました。
※2025年10月取材。

監修医師:
蓬󠄀田 翔太(柿の木坂整形外科クリニック)
平成24年福島県立医科大学医学部医学科卒業。福島県立医科大学整形外科 入局。平成27年福島県立医科大学大学院入学。総合南東北病院など福島県立医科大学関連病院で研さん。平成31年福島県立医科大学 大学院卒業。坂下厚生総合病院、総合南東北病院(宮城県 岩沼)を経て現職。日本整形外科学会認定 整形外科専門医、日本整形外科学会認定 運動器リハビリテーション医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、医学博士。
PRP療法とは?
編集部
PRP療法とは、そもそもどのような治療なのでしょうか?
蓬󠄀田先生
PRP療法とは、患者さん自身の血液から血小板を多く含む成分を取り出して、痛みのある関節や腱などに注射し、症状の改善を図る治療です。以前はプロスポーツ選手やアスリートなどの治療に用いられることが多かったのですが、近年では広く一般の人に対しても行われるようになりました。
編集部
PRPは、どのように作られるのですか?
蓬󠄀田先生
まず患者さん自身の血液を採取し、それを遠心分離機にかけて、血液成分を分けます。その中から血小板を多く含む血漿を取り出して集めたものを、PRPといいます。PRP中の血小板濃度は通常の血液の2〜5倍程度になることがあるとされています。
編集部
どのような病気や症状に使われることが多いのでしょうか?
蓬󠄀田先生
PRPはさまざまな領域で用いられますが、整形外科では慢性的な腱の障害や、変形性膝関節症に伴う痛みなどで用いられることがあります。一方で、すべての関節痛に同じように効くわけではなく、病態や進行度によって向き不向きがあるため、使用には注意が必要です。また、必ずしも「高濃度=高効果」ではないということも理解しておいてください。
編集部
PRP療法は、再生医療と考えてよいのでしょうか?
蓬󠄀田先生
PRPは傷んだ軟骨や組織を元どおりに完全再生させるわけではありません。しかし、傷ついた組織の修復を促す側面があるため、「再生医療」として紹介されることが多くなっています。
PRP療法がなぜ、膝や関節の痛みに効くのか?
編集部
PRP療法は、なぜ膝や関節の痛みに効くのでしょうか?
蓬󠄀田先生
PRPには多くの血小板が含まれており、血小板の中には組織修復に関わる成長因子が存在します。これらが局所で働くことで、傷んだ組織の修復反応を後押しし、炎症を和らげる方向に作用すると考えられています。仕組みはまだ完全には解明されていませんが、関節内の環境を整えることで、痛みやこわばりの改善につながる可能性があります。
編集部
変形性膝関節症には、どのように作用すると考えられていますか?
蓬󠄀田先生
変形性膝関節症では、軟骨が摩耗し、骨の変性や炎症が加わることで痛みや可動域制限が起こります。関節内の慢性的な炎症も痛みの大きな原因になるため、PRPは関節内環境を調整し、炎症を減らすことで、痛みやこわばりの改善に役立つ可能性があります。つまり、すり減った軟骨を元に戻すのではなく、炎症の悪循環を和らげて症状を軽くするイメージです。
編集部
注射してすぐに効果が出るのでしょうか?
蓬󠄀田先生
PRP療法は、痛み止めの注射のように直後からはっきり効く治療とは少し異なります。効果を実感するまでに数週間かかることがあり、注射後1〜2週間はかえって注射部位の痛みが増す場合もあるといわれています。即効性よりも、時間をかけて変化をみる治療と考えたほうがよいでしょう。
編集部
PRP療法は、どのような人に向いているのでしょうか?
蓬󠄀田先生
変形性膝関節症が進行し、人工膝関節置換術などの手術が検討される段階において、従来の保存療法に代わる選択肢の一つとして、PRP療法が選ばれるケースが増えています。ただし、すべての症例で手術が不要になるわけではなく、適応の可否は慎重に判断する必要があります。

