従った住民がすべての責任を負う
もう一つ、見過ごせない問題があります。交通誘導の権限です。警備員の誘導には、法的な強制力がありません。警備業法は、警備員に特別な権限を与えていないと明記しています。信号や標識と違い、警備員の「こちらへどうぞ」は、任意のお願いにすぎません。
従うかどうかは、運転者が決めます。警察官の交通整理とは、重みがまるで違います。この違いが、住民に牙をむきます。誘導に従って逆走し、切符を切られても、事故を起こしても、責任を負うのは運転者本人。「警備員に言われたから」は、通用しません。
実際、東京地裁は2003年、次のような判断を示しています。交差点の信号が「直進と左折のみ可」を示す中、警備員が右折の合図を出し、それに従って右折した車が対向車と衝突した事故。裁判所は、警備員の誘導ミスを認めつつも、信号表示に反して右折した運転者自身の義務違反は重いとして、運転手7・警備員側3の過失割合としました(東京地裁2003年9月8日判決、自動車保険ジャーナル1546号)。
ふさいだのは事業者。なのに、違反の責任だけが、たまたま通りかかった住民に転嫁されます。加害と負担が、きれいにねじれているのです。
電気工事は必要です。現場で働く方々には、敬意を払います。だからこそ、手続きと運用は正しくあってほしいです。「許可の範囲を守る」「車が来たらどかし逆走させない手続きを踏む」というだけのことです。
逆走の反則金を自分で払うか、30分足止めされて、親の通院を諦めるか、どちらを選んでも、私たちは「違反者」か「わがままな住民」にされてしまいます。これは今日も、どこかの街で起きています。だからこそ、変わってほしいと強く思います。
