頸部食道がんの治療に伴う声や嚥下機能への影響と、術後のケアについて医師が解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「頸部食道がん」になると喉にどんな症状が現れるかご存じですか?医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
佐賀大学医学部卒業。南海医療センター消化器内科部長、大分市医師会立アルメイダ病院内視鏡センター長兼消化器内科部長などを歴任後の2023年、大分県大分市に「わだ内科・胃と腸クリニック」開業。地域医療に従事しながら、医療関連の記事の執筆や監修などを行なっている。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本医師会認定産業医の資格を有する。
頸部食道がんとは

頸部食道がんとはどのような病気でしょうか。本章では頸部食道がんという病気について解説します。
頸部食道とは
頸部食道とは、食道のうち首に位置する部分を指します。食道は咽頭と胃をつなぐ管です。頸部食道はちょうど喉の下端から食道へ移行する部分で、気管や声帯と近接しています。このため頸部食道のがんは、場所によっては声帯や気管に浸潤する可能性があります。
頸部食道がんの概要
頸部食道がんは、その名のとおり頸部食道に発生する食道がんです。多量の飲酒や喫煙は重要な危険因子です。こうした生活習慣に起因するため、患者さんは中高年の男性が多い傾向があります。
頸部食道がんの発生頻度
日本において食道がんは年間約2~3万人が診断されていますが、そのなかで頸部食道がんは全体の約5%です。このように頸部食道がんはまれですが、治療の難しさや機能への影響の大きさから専門的な対応が必要な疾患です。
治療に伴う機能への影響と術後ケア

頸部食道がんの治療は、生命を救うために必要不可欠ですが、その過程で声や飲み込む機能(嚥下)に影響が及ぶことがあります。特に手術で喉頭を摘出した場合や、放射線治療で組織にダメージが及んだ場合、声を出す機能や食べ物を飲み込む機能の低下が避けられません。そこで、治療後のリハビリテーションや代替手段の活用によって、できるだけ日常生活の質を維持・向上させることが大切です。本章では、声と嚥下機能への影響と対策を解説します。
声を失う可能性と代替手段
頸部食道がんの治療では、場合によっては声を失う可能性があります。特に声帯も含めた摘出を行った場合、手術後は自分の声で話すことができなくなります。喉頭を失った患者さんは、気管と食道が分離された状態で首の前面に永久気管孔と呼ばれる呼吸孔が造られます。この状況では通常の発声機能が失われるため、別の方法で声を作り出す訓練が必要になります。
代表的な代替音声の手段として、以下の方法があります。
食道発声(訓練によって空気を食道に入れて発声)
電気式人工喉頭(機械的に音声を発生)
シャント発声(気管食道シャント法):気管と食道の間に細い管(シャント)を設置
これらの方法に加え、筆談や音声アプリなどで補助することもあります。
嚥下リハビリ
嚥下機能(飲み込む力)のリハビリテーションは、頸部食道がん治療後の生活の質を左右する重要なポイントです。手術で食道や周囲組織を切除・再建すると嚥下の動きが変化しますし、放射線治療でも筋肉の硬化や唾液の減少により飲み込みが悪くなることがあります。適切なリハビリによって嚥下に関わる筋を鍛え、誤嚥を防止しつつ経口摂取の回復を目指します。摂食・嚥下リハビリの専門職(言語聴覚士)との連携がとても重要です。

