俳優の仲野太賀が主演を務めるNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」(総合ほか)の第30回が9日に放送され、兄・織田信長(小栗旬)を失った悲しみから立ち直れず、引きこもる市(宮﨑あおい)の姿が描かれた。これまで凛とした存在感を見せてきた市が、暗い部屋で信長からの手紙を読み返し、食事もろくに取らないほど憔悴する姿に驚く視聴者が続出。SNSには「消えてしまいそうじゃないか」「まるで幽鬼のよう」などのコメントが相次いだ。
「豊臣兄弟!」とは?
豊臣秀長(仲野)を主人公に、天下人となる兄・秀吉を補佐役として支えた弟の目線で戦国時代をダイナミックに描く大河。連続テレビ小説「おちょやん」や、「半沢直樹」「下町ロケット」「陸王」(以上、TBS)などのヒット作で知られる八津弘幸さんが脚本を担当する。
信長からの手紙に囲まれ引きこもる市(宮﨑あおい)
第30回では、信長亡きあとの織田家の行く末を決める清須会議が描かれ、羽柴筑前守秀吉(池松壮亮)をはじめ、柴田勝家(山口馬木也)、丹羽長秀(池田鉄洋)、池田恒興(堀井新太)ら重臣が清須城に集まった。
一方、愛する兄を失った市は深い悲しみに沈み、奥の間に引きこもっていた。ろくに食事も取らず、部屋には信長から贈られた文が散らばっている。市はそれらを一枚ずつ読み返しながら、かつて兄と過ごした時間を思い出していた。
ひそかに市を思い続けてきた勝家は、越前から海の幸を献上して見舞う。誰とも会おうとしなかった市だったが、勝家には対面を許した。しかし勝家は、信長を守れなかった自分には市に合わせる顔がないと固辞。額を畳に押し当てて後悔の涙を流す勝家に、市は「さびしいのう」とつぶやいた。
その後、秀吉が市のもとを訪れる。襖が開くと、そこにいたのは、これまでの凛とした市からは想像できないほど憔悴した姿だった。
秀吉は、信長の仇である明智光秀(要潤)を討ち取ったことを報告したうえで、世継ぎとなる幼い三法師(清水伊織)を支える新たな体制を築くため、市に勝家との縁組を求める。市は「自分を利用するのか」と問いただすが、秀吉は織田家のためだと説明。「真、織田家のためか?」と念を押されると、秀吉は「無論でござりまする!」と答えた。
市は一瞬考えた末、「ではそなたの言うとおりにいたそう」と受け入れるが、「縁組は一人ではできぬ。勝家が承知すればの話じゃ」と条件を付けた。
兄を失ったことで、織田家の未来そのものが揺らぎ、さらに秀吉から自らの婚姻を政治的な手段として提示された市。この場面は、兄を失った悲しみと、織田家を取り巻く現実を受け入れなければならない苦しみが重なった場面ともいえる。
そして清須会議で、重臣による合議制で三法師を支える体制が決まった後、市は勝家を呼び出す。
そこには、先ほどまでの憔悴した姿とは別人のような、かつての凛とした市がいた。「やらねばならぬことができた」。そう切り出した市は、勝家に「私をめとれ」と告げた。
信長を失って心を閉ざしていた市が、織田家の行く末を左右する決断を自ら下すまでに変化した。市の悲しみだけでなく、信長亡き後の織田家を背負う覚悟が形になった場面ともいえる。
これまでの市は、信長に対しても、羽柴兄弟に対しても、芯の強さを感じさせる女性として描かれてきた。だからこそ今回、暗い部屋に閉じこもり、信長の手紙を読み返しながら「先のことなどどうでもよい」と語る姿との落差が大きなインパクトとなった。
今までにない市の落ち込みように、SNSには、
「うえー、お市様…」
「兄を愛する余りあの修羅場に耐えられなかったお市様」
「旦那が亡くなった時よりすごい」
「消えてしまいそうじゃないか」
「今回のお市さま、ゾクッとする雰囲気がある」
「おいたわしや、お市様…まるで幽鬼のよう。ぶっちゃけホラー」
などのコメントが寄せられた。「幽鬼のよう」という反応からも、やつれた姿や暗い部屋で信長の手紙を読み返す姿が、これまでの市とは異なる印象を与えたことがうかがえる。
そしてもう一つ大きく変化したのが、市と秀吉の関係だ。これまでの物語では、羽柴兄弟と市は比較的良好な関係を築いてきたが、今回、秀吉が市と勝家の婚姻を、三法師を支える新体制のための政治的な手段として提案したことで、その関係に変化が生じ始める。市自身も、秀吉が自分を利用しようとしているのではないかと疑問を口にしている。
視聴者からは、
「そういう理由で権六殿とお市様をくっつけようと」
「この大河においては、市と柴田勝家の婚姻は秀吉の発案なん? 画期的だわ」
「大河ドラマでは非常に珍しい『お市と秀吉の仲が悪くないどころか良好だった』のも、この三法師の後見絡みを機に、めっちゃ悪くなるわけか」
などの声も上がった。史実として知られる市と勝家の婚姻を、秀吉の政治的な思惑と、市自身が信長亡き後に下した決断として描いたことで、今作独自の人物関係が浮かび上がった。
市の決断によって、これまで羽柴兄弟を信頼してきた市と秀吉の関係は大きく変わり始めた。さらに、幼い三法師をめぐり、織田家中の主導権争いも激しさを増していく。市と勝家の婚姻は秀吉との対立を深めるきっかけとなり、三法師をめぐる勢力争いもさらに過熱するとみられる。第31回では、清須会議で決まった新体制をめぐり、織田家中の対立がさらに表面化していく。

