私たちは言葉なしで動いていた、あの夜
転機は、突然やってきました。
深夜2時すぎ、子どもが「お腹痛い」と言いながら起き上がりました。額に手を当てるとひどく熱い。
熱が出たのもかなり久しぶりで、体温計を探しながら、A子は半分パニックになっていました。
解熱剤はどこだったか、冷却ジェルシートはまだあったか、念のため着替えも用意しておくべきか──頭の中がぐるぐるしているうちに、夫がいつの間にか起き上がり、財布だけ持って玄関を出ていきました。
戻ってきた夫が手にしていたのは、解熱剤と冷却ジェルシート。
A子が子どもの着替えと保険証を準備している間に、夫はスマホで近くの救急対応クリニックを調べ、かかりつけ小児科医の翌朝の受付時間とともに、メモに書いて冷蔵庫に貼っておいてくれていました。
一言の相談もなかった。
役割を決めたわけでもない。それなのに、動きがきれいに噛み合っていたのです。
うちは、うちのやり方でいい
後日、友人に「仮面夫婦じゃないと思う」と報告すると、「どういうこと?」と首を傾げられました。
うまく説明できなかったけれど、「なんか、うちはうちのやり方があるみたいで」と言うと、「それが一番いいかもね」と笑ってくれました。

