女優の蒼井優がヒロイン瀬尾咲子を演じる連続ドラマ「Tシャツが乾くまで」(TBS系)の第6話が14日、放送され、行方不明になっていた咲子の夫・充(松山ケンイチ)が約1年ぶりに帰宅。充に「失踪癖」があることが明らかになった。これまで咲子は、突然いなくなった夫について、自分との結婚生活に何か問題があったのではないかと思い悩んできたが、この日の放送で、充自身が、咲子と出会ってすぐのころに一度失踪したと告白。充の失踪は、咲子との夫婦関係だけでは説明できない可能性が浮上した。さらに、充の店で働く矢野直人(高橋文哉)が過去の失踪を知っていたことも判明し、これまで描かれてきた充と直人の関係にも、新たな意味が生まれる展開となった。
「Tシャツが乾くまで」とは?
「silent」「いちばんすきな花」(23年)、「海のはじまり」(24年、いずれもフジテレビ系)などの脚本を手がけた生方美久氏によるオリジナルストーリー。愛する夫と幸せな結婚生活を送っていたヒロインが、ある夏の日に別の夫婦とともに事故に巻き込まれたことで、当たり前に続くと思っていた日常が崩れ去り、愛する人の「第3金曜日の秘密」が暴かれていくさまを描く。
直人(高橋文哉)「いつぶりですか? 失踪」と…
物語では、バス事故をきっかけに夫の充が失踪した咲子と、同じ事故で妻・園田あずさ(夏帆)を亡くした樹生(中島歩)が、互いのパートナーの不倫を疑い、2人の過去を探ってきた。その過程で、咲子と樹生は似た境遇や意外な共通点を知り、少しずつ距離を縮めてきた。第5話(7日放送)で事故から約1年が経過。2人が互いを意識し始め、夫婦という形にとらわれず同居することを決めた矢先、充が突然帰宅した。
この日の放送で、気持ちを切り替えるため、樹生に手伝ってもらいながら充の持ち物を処分しようとしていた咲子は、作業を中断。樹生は、妻が亡くなるきっかけを作った充への怒りを抑えきれず、思わず殴りかかろうとする。咲子に止められた樹生は、頭を冷やすためその場を離れることに。咲子は、後日、樹生を交えて充から事情を聞くことを約束した。
久しぶりに充と2人きりになった咲子は、怒りと安堵が入り混じる複雑な感情を抱えながら、失踪の理由を尋ねる。バスの目的地だった長野へ向かったのは、疎遠になっていた両親に会うため。失踪後は両親のもとで過ごしていたが、父親が亡くなり、憔悴する母親の姿を見て咲子のことが心配になったという。
さらに、自分の喫茶店を任せている直人に頼み、店の電話を使って咲子と話せるように手配したと説明するが、咲子は充の話を聞きながら、「どこか本音と違う気がする」と感じる。充の説明を聞けば聞くほど、これまで信じてきた夫婦関係そのものが揺らいでいく。
第6話では、充と咲子が出会ったころの過去も描かれた。
2人が出会ったのは、友人の結婚披露宴。新郎新婦が両親への感謝を語る時間に耐えられず、席を外した咲子は、同じように外で一服していた充と出会う。充は、良好な家族関係を見せられると、親と折り合いの悪い自分が「欠陥品」のように思えてつらくなると語った。その言葉に咲子は共感し、2人は急速に距離を縮めていく。
しかし、何度かデートを重ねた後、充から突然連絡が途絶える。咲子が自分を責めながら待っていると、3カ月後に充から連絡が届く。海外出張に行っていたと説明され、咲子は安堵。2人は交際を再開し、その後結婚した。咲子には、充となら「家族になれる」という予感があった。共同生活の中で起きる問題も、話し合えば解決できると信じ、夫婦として暮らしてきた。
子供のいる生活を望んでいた咲子は妊活に励むが、思うような結果は得られず、やがて2人で暮らす人生を受け入れ、一軒家を購入。咲子は幸せを感じていた。
それでも、充は家を出ていった。
咲子は「自分が何かを間違えたのか」「充が新しい正解を見つけたのか」と思い悩む。充は咲子の落ち度を否定するが、咲子は「後者」だと受け止め、家を飛び出してしまう。この時、引き止めようとした充の指から結婚指輪がなくなっていたことも、印象的な描写だ。
どこへ行く当てもなく、いつものコインランドリーで黄昏ていた咲子のもとに、散歩途中の樹生が現れる。他愛もない会話を交わすなか、ささくれた心を癒やされる咲子。樹生も、こんな時間がずっと続けばいいと思っていたと話し、2人は互いの奇妙な絆を再確認する。その後、充は久しぶりに自分の店へ顔を出し、直人と再会する。失踪中も店を切り盛りしてくれた直人に、充は「直人くんがいてくれて良かった」と感謝し、「いなかったら逃げなかったかも。逃げてももっと早く戻ったかも」と語る。すると直人から思いもよらない質問が飛び出す。「いつぶりですか? 失踪」。充は驚きも動揺もせず、「うーん、さっちゃんと出会ってすぐのころ。もう、10年くらい?」と答え、直人から「すごいじゃないですか」と感心されると、「すごいのはさっちゃんのほうなんだけどね。こんなに長く同じ場所に留まってられた」と返した。
ここで明らかになったのは、充にとって「失踪しないこと」のほうが特殊だったという事実。これまで咲子は、充が家を出ていった理由を「自分との結婚生活」と考えていた。しかし充の告白によって、その見方そのものが大きく揺らぐ。
充は咲子と結婚したから突然いなくなったのではなく、もともと長期間同じ場所にとどまることが難しい人物なのではないかという疑問が浮かぶ。そう考えると、交際初期に3カ月間連絡が途絶えた出来事も、今回の約1年間の失踪も、別々の出来事ではなく、一つの人物像につながってくる。
もう一つ見逃せないのが、直人の反応だ。充が過去にも失踪していたことを、直人は当然のように知っていた。しかも「いつぶりですか? 失踪」と尋ねていることから、今回が初めてではないことも把握している。ポイントは、直人がいつから充の失踪癖を知っていたのかという点だ。
第6話が終わった時点で明確な答えは示されていないが、直人が充の過去を知る人物として描かれていることは、今後の展開を考える上で重要なポイントになりそうだ。
充の「失踪」が今回だけの特殊な行動ではなかったと分かったことで、これまで何気なく描かれてきた直人と充の会話にも、新たな意味が生まれている。
充の失踪が、咲子との結婚生活だけを理由とするものではなかったことが判明すると、SNSには、
「海外出張じゃなくて失踪だったの!? あの時も!?」
「やっぱり失踪常習犯だったよ」
「失踪癖があるのに何故結婚したんですかね…充は」
「なんて男なんだ…」
などの反応が寄せられた。
また、直人が過去の失踪を知っていたことについても、
「直人は何…?!」
「失踪いつぶり? って、直人くんは充のそういうところも知ってたの?」
「てか、その頃から直人は知り合いだったの?」
「直人くんからの説明も聞きたいですね」
「直人は何か知ってるよね、充が失踪する理由。そこが鍵?」
といったコメントが見られた。
第6話最大のポイントは、充の失踪を「咲子との夫婦関係の破綻」という一つの原因だけで捉えることが難しくなったこと。充自身は、咲子との生活を否定しているわけではなく、それどころか、約10年間も同じ場所にとどまっていられたことを「さっちゃんのほうがすごい」と振り返っている。だからこそ、充にとって咲子との結婚生活は「失踪をやめられていた時間」なのか、それとも「失踪するまでの時間が長くなっただけ」なのかという疑問が残る。
第6話は、充が帰ってきたことで謎が解けたというより、「なぜ充は何度も姿を消すのか」という、さらに大きな謎を提示した回として見ることができる。

