女優の蒼井優がヒロイン瀬尾咲子を演じる連続ドラマ「Tシャツが乾くまで」(TBS系)の第7話が21日、放送され、1年ぶりに帰宅した咲子の夫・充(松山ケンイチ)の告白と、バス事故で命を落とした園田あずさ(夏帆)の日記から、充の知られざる生い立ちや失踪癖の背景、あずさとの関係性が次々と明らかになった。一方、結婚前のあずさについては、まだ多くの謎が残されている。そんななか、あずさが生前働いていた古書店「上々堂」の店主・宮内幸次(リリー・フランキー)が、彼女の過去を知る重要人物として浮かび上がってきた。
「Tシャツが乾くまで」とは?
「silent」「いちばんすきな花」(23年)、「海のはじまり」(24年、いずれもフジテレビ系)などを手がけた生方美久氏によるオリジナルストーリー。愛する夫と幸せな結婚生活を送っていたヒロインが、ある夏の日、別の夫婦とともに事故に巻き込まれたことで、それまで当たり前だった日常が崩れていく。
そして、愛する人が抱えていた「第3金曜日の秘密」が少しずつ明らかになっていくさまを描く。
宮内(リリー・フランキー)は幼少期のあずさを知る人物?
物語では、バス事故をきっかけに夫・充が失踪した咲子と、同じ事故で妻のあずさを亡くした樹生(中島歩)が、互いのパートナーに不倫の可能性があったのではないかと疑い、過去を探ってきた。その過程で、2人は似た境遇や意外な共通点を知り、少しずつ距離を縮めていく。事故から約1年が経ち、互いを意識するようになった2人は、夫婦という形にとらわれず同居することを決める。ところが、その矢先に充が突然帰宅した。咲子は樹生を自宅に招き、充から事故前後の事情を聞くが、充はあずさとの不倫関係を否定。咲子と樹生はすぐには信じられなかったものの、充から「自分たちも不倫を疑われるような行動をしているのではないか」と反論され、結論ありきで相手を疑っていたことに気づかされた。
この日の放送で、充はこれまで咲子に伏せてきた自身の生い立ちを明かした。
子供を望んでいなかった両親のもとに生まれた充は、生活に必要な世話や教育は受けていたものの、ほめられることも叱られることもなく、家庭の中で愛情を感じられないまま育った。親の機嫌を損ねないよう「いい子」で振る舞う術を身につけ、父親の転勤によって転校を繰り返したことで、故郷や地元という意識も育たなかった。
そんな充にとって、小学1年生のころに母親(菜葉菜)と訪れた喫茶店の店主(田口浩正)は、心のよりどころとなり、親には聞いてもらえないことや、「いい子」でいるために学校では話せないことも、店主には話すことができた。
やがて引っ越しが決まり、店主から「どこか1つの場所やら、誰か1人にこだわる必要はない。これからはどこだって行ける。いろんな人に会えるよ」と言われた充は、さびしがってもらえなかったことに落胆しながらも、「どこかに留まってなくていいんだ」と気持ちが楽になり、その日の夜、人生で初めて「逃げた」。
迷子として保護された充は、親から「もう余計なことするな」と注意されたが、誰にも知られず、目的もなく遠くへ行く感覚が忘れられず、その後も2~3年に1度のペースで失踪を繰り返すようになる。社会人になってからは、失踪するたびに転職し、人間関係そのものをリセットしていた。咲子と出会ったころに3カ月ほど音信不通になったのが最後の失踪で、結婚後は、その衝動を抑えることができていた。
ところが、子供を持つことを諦め、2人の終の棲家として購入した一軒家で暮らし始めると、「もう逃げられないんだ」という感覚に襲われ、再び失踪衝動が湧き上がるようになる。
そんなとき、充はコインランドリーであずさと出会う。日付は、2024年6月21日の金曜日。
あずさは児童養護施設で育ったことをあっけらかんと話した。「子供の数が多いから、大人に自分の話を聞いてもらう機会がなかなかなかった」と振り返り、充にも身の上話をするよう促した。充は、失踪癖も含め、咲子にも両親にも話していなかったことを一気に吐き出す。嫌われたくない咲子には本当の自分を明かせなかった一方、好かれる必要のないあずさには、何でも本音で話すことができた。
そして今度は充があずさの話を聞くため、翌月の第3金曜に再会する約束をする。それ以降、事故までの1年間、2人が毎月第3金曜に会って話をする時間が定着していった。あずさとの時間は、充にとって失踪衝動を抑える「ストッパー」にもなっていた。
充とあずさが過ごした「第3金曜日」をめぐる回想と並行して描かれたのが、あずさの日記を読む樹生の姿。この日記を、あずさの死後約1年間にわたって、宮内は預かっていた。宮内はあずさの葬儀後、店に置きっぱなしになっていた遺品を樹生に届けたことがあったが、その際、日記は渡さず、充が帰ってきたことを知ってから、ようやく樹生に返した。
日記の内容を気にする樹生に対し、宮内は「キミが読んでショックを受けるようなことは書いてなかったよ」と話す。さらに、「あ、ごめんなさい。僕、読みました」と、勝手に日記に目を通したことを謝った。
宮内は嫌味な物言いが目立つ、一見すると不躾な人物だが、「死んだってプライバシーは守られるべきだと思いますよ」「残された人間の都合で個人の過去を捻じ曲げるのもよくない」といった、物語の核心に触れる言葉も発している。
感情に流されて相手を疑いがちな咲子や樹生に対し、宮内は一歩引いたところから物事を見る役割を担っているようにも見える。
他人の日記を無断で読むことは倫理的に問題があるが、これまでの宮内の言動を踏まえると、あずさの過去を知る人物として、その人となりを樹生に伝える必要があると考えていた可能性もある。
宮内があずさの過去を知る人物だと考えられる根拠は、今回だけではない。
第5話(7日放送)では、宮内が養護施設時代のあずさと関わりがあったことが明らかになった。さらに第7話では、あずさが施設に絵本を寄付しに来てくれる本屋のおじさんによく話を聞いてもらっていたと充が語る場面があった。そして、その人物が宮内であることが示唆された。
ここが重要で、充にとって、小学生時代に自分の話を聞いてくれた喫茶店の店主が心のよりどころだったように、幼いあずさにとっても、話を聞いてくれる宮内は特別な存在だった可能性が高い。つまり、充とあずさはともに「誰にも話せなかったことを聞いてくれる大人」に出会っていた。
そして現在、宮内はあずさの過去を知る数少ない人物として物語の中に「残っている」。ここまでの描写をつなげて考えると、宮内は単にあずさが働いていた古書店の店主というだけではなく、結婚前のあずさがどんな人生を送り、何を考え、誰にも話せなかったことを誰に託していたのかを知る人物として、重要な位置にいると考えられる。
少しずつ明らかになる宮内の人物像に、視聴者からも注目が集まっており、SNSには、
「本屋のおじさんって…」
「絵本を寄付しに来るおじさんがリリー・フランキーか」
「やっぱ、施設からの付き合いか…」
「あぁ…だからリリー・フランキーは昔から知ってるのか…」
「あずさの事をよく知ってたのは小さい時から見守っていたからなんだね」
「パートナーとは違う“なんでも話せる関係”の存在がいたと…あずさ視点だと充と本屋の店主だったのかしら」
といったコメントが寄せられている。
あずさが幼いころから誰にも言えないことを宮内に話していたとすれば、彼こそが結婚前のあずさを最もよく知る人物なのかもしれない。
これまで宮内の口から、施設時代のあずさについて詳しく語られることはほとんどなかった。だからこそ、今後、宮内の証言を通して、あずさの知られざる過去が掘り下げられ、彼女の知られざる一面が明らかになる展開も考えられる。

