倉持由香「未来が真っ暗に…」息子の“自閉スペクトラム症”と向き合えたきっかけと家族の今とは

倉持由香「未来が真っ暗に…」息子の“自閉スペクトラム症”と向き合えたきっかけと家族の今とは

「湊と一緒に攻略していこう」。息子・湊さんが2歳半で自閉スペクトラム症と診断され、将来への不安から立ち止まっていたタレントの倉持由香さんを前向きにしたのは、夫の言葉でした。療育手帳の取得や個別療育、絵カードを使った生活の工夫を重ねるなかで、家族は少しずつ湊さんに合った関わり方を見つけていきます。診断を公表した後に寄せられた「実はうちも」という声に、倉持さんが感じたこととは。療育や日々の葛藤、成長への思いについて、龍先生の解説とともにお伝えします。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2026年7月取材。

>【写真あり】倉持由香、自閉スペクトラム症の息子と夫・ふ~どのオフショット

倉持さん

倉持 由香 さん(タレント・グラビアアイドル)

SNSを活用した高い自己プロデュース力でグラドル界のビジネスモデルを構築。2019年にプロゲーマーの「ふ~ど」さんと結婚し、現在は女性eスポーツチーム「G-STAR Gaming」のプロデューサーとしても手腕を発揮している。「児童発達支援士」の資格を取得するなど、育児や障がい児支援に関する発信活動なども行っている。

龍先生

龍 彩香 先生(日本小児精神神経学会認定医)

昭和54年生まれ。聖マリアンナ医科大学卒。家庭医療学研修で成人・老人医療の経験を経て、小児科(東京慈恵会医科大学)へ転科し、福島県立矢吹病院(現福島県立ふくしま医療センターこころの杜)児童精神科でも診療。現在は神奈川県川崎市にある新百合ヶ丘龍クリニックの副院長を務めています。日本専門医機構小児科専門医。日本小児科医会認定の子どもの心相談医。子どものこころ専門医機構子どものこころ専門医。

「湊と一緒に攻略していこう」夫の言葉に支えられ、療育と生活の工夫を重ねた日々

「湊と一緒に攻略していこう」夫の言葉に支えられ、療育と生活の工夫を重ねた日々

龍先生

診断を受けてから、前向きに向き合えるようになったきっかけを教えてください。

倉持さん

湊が2歳半のときに自閉スペクトラム症診断を受けてから、1カ月半くらいは、この先どうしたらいいのだろうと、未来が真っ暗になった感覚がしていました。ずっとベッドの中で携帯を見ながら、自閉スペクトラム症の将来や原因を調べ続けていました。そんなあるとき、夫から「いつまでもそうしていても何も起きないよ。湊はもう生まれて育っているんだから、これから一緒に時計を動かしていこう。この先どうなるかまだ分からないけど、湊と一緒に攻略していこう」と言われて、プロゲーマーでポジティブな夫らしい視点だなと思い、そこから前向きになれました。

龍先生

療育手帳を取得されたと伺いましたが、そのときのお気持ちはいかがでしたか?

倉持さん

病院の先生に今後どうしたらいいか相談したところ、児童相談所に行けば療育手帳を発行してもらえると教えてもらいました。手帳を取ることに抵抗を感じる保護者もいて、我が子が障がい児だということを認めることになってつらくなってしまう、という説明も受けました。でも、夫が「もらえるものはもらっておこう、行政とつながっておくことは大事だよ」と後押ししてくれて、児童相談所に行くことにしました。

龍先生

児童相談所というと、意外なイメージを持つ人も多いかもしれませんね。

倉持さん

私も知能検査や療育手帳の発行も行っていることを、そのときに初めて知りました。知能検査を受けて軽度知的障害の判定を受け、4度の等級の療育手帳が発行されました。その後、療育相談所で受給者証(療育などの福祉サービスを利用するために必要な証明書)を取得して、療育に通うようになりました。

龍先生

自閉スペクトラム症のお子さんには、脳の学習や認識のタイプの違いから、曖昧な指示が伝わりにくいという特徴があります。「ちゃんとして」「しっかりして」ではなく、「ここに座ってね」「これで終わりだよ」というように、具体的な言葉で伝えることが大切です。言葉の理解や発語のスピードには個人差があり、流暢に話せても会話がかみ合いにくいお子さんもいます。

倉持さん

コミュニケーションの方法自体は、どのように広げていけるのでしょうか?

龍先生

表情や視線、身振り手振り、絵カードやタブレットなど、コミュニケーションの手段はさまざまな形で確立できます。好きなことについては夢中になって話してくれることも多いので、好きな活動やコミュニティを見つけてあげることも、生きやすさにつながります。

倉持さん

自閉スペクトラム症の子どもを育てる中で、ほかに意識しておくとよいことはありますか?

龍先生

始まりと終わりの見通しが立たないと不安になりやすいので、スケジュールを絵カードなどで視覚化したり、予定を変更するときは事前に伝えたりすることも効果的です。決まったことを繰り返すのは心地よいことですが、そこに少しずつ変化を経験させてあげることも大切です。そして何より、できていることに注目して認めてあげることが、自己肯定感を育てます。

倉持さん

親自身の気持ちの持ち方については、どう考えたらよいでしょうか?

龍先生

お子さんへの対応だけでなく、保護者自身のメンタルケアも重要です。定型発達(身体的·知的·社会的·情緒的な発達が平均的な範囲に収まる状態)のお子さんの育て方どおりにはいかないことも多いので、TEACCH(自閉スペクトラム症のある人への構造化を中心とした療育・支援法)やPECS(絵カードを使って気持ちや要求を伝える練習をするコミュニケーション支援法)など、専門的なアプローチを学ぶことも、育児の負担を減らすことにつながります。保護者が笑顔で過ごせる方法を、私たち専門家と一緒にみつけていけるとよいと思います。

倉持さん

最初の頃は、集団療育に通っていました。みんなで座る練習をしたり、時間割どおりに動く練習をしたりするものでしたが、湊は座ることもできず、親子リトミックでもずっと走り回っている状況だったので、個別療育に切り替えました。個別だと先生がじっくり湊と向き合ってくれるので、良かったなと感じています。自宅では、湊がどんな気持ちでその行動をしているのかもっと知りたくて、児童発達支援士の資格を取りました。そのテキストを夫や家族、友人も読んでくれて、多くの人の力を借りながら育てているという感覚があります。

龍先生

生活の中では、どのような工夫をされているのでしょうか?

倉持さん

絵カードを使ってお風呂やご飯、就寝などの生活のルーティンを伝えていたら、今では「〇〇だよ」と言うだけでスムーズに動けるようになってきており、大きな成長を感じています。

龍先生

今、生活の中で困っていることはありますか?

倉持さん

偏食とトイレトレーニング、睡眠は困ることが多くあります。偏食は2、3歳のころはうどんやフライドポテト、蒸しパンなどしか食べられませんでしたが、最近は食べられるものも増えています。一方で、感覚過敏がある子どもにとって、食べられないものを口にすることは、大人が砂や泥を食べるような強い嫌悪感と似ていると学び、無理に食べさせることはかわいそうだと感じています。それよりも、楽しく食事をすることや、食べられるものから少しずつ栄養を取れることを大切にしています。

龍先生

トイレトレーニングについては、いかがですか?

倉持さん

トイレに関しては、目を離しているうちにリビングが大惨事になることもあります。私が注意すると、ときには蹴ったり、つねったり、かんだりといった他害をしてしまいます。2歳ごろからあり、5歳になって力も強くなってきたので、この先どうなってしまうのか、時々不安に思います。

龍先生

トイレトレーニングの途中で他害が出てしまうのは、感覚の変化に戸惑っているサインでもあります。感覚の敏感さを和らげるお薬という選択肢もありますし、専門家に相談しながら、試行錯誤していくことも大切です。

倉持さん

睡眠についても、2歳半ごろから夜11時や12時、遅いときは深夜1時にならないと寝ないこともあります。以前は8時、9時から寝かしつけを始めて何もできない時間が続いたこともありましたが、思いきって寝かしつけを始める時間を11時以降にずらしたところ、30分ほどで眠ってくれるようになり、気持ちがかなり楽になりました。

龍先生

寝つきが悪いお子さんは、脳が休みたくてもさまざまなことに興味が向いて休まらないタイプであることが多いです。しっかり眠れることは体や脳の発達にとって大切です。お子さんが使えるお薬もあり、睡眠の質の変化にもつながるので、こちらもぜひ相談してみてください。

「実はうちも」の声に救われた。公表を経て見つけた家族の「今」とこれから

龍先生

湊さんと過ごす中で、楽しかったエピソードや成長を感じる場面はありますか?

倉持さん

小さいころは、私の手を取って何かを開けさせるといった「クレーン現象」が多く見られましたが、最近は自分で冷蔵庫まで行って牛乳を持ってきたり、「これ捨ててきて」と言うとゴミ箱に捨ててくれたりと、意思疎通ができるようになってきて成長を感じます。

龍先生

ほかにも、成長を感じたエピソードはありますか?

倉持さん

旅行にもよく行くようにしていて、以前は飛行機での小さな子の泣き声が苦手だったようですが、最近はヘッドホンをつけてタブレットの音量を上げるなど、自分で自分の気持ちに対処できるようになっていたことがうれしかったですね。

龍先生

湊くんの障がいを公表しようと思われた理由を教えてください。

倉持さん

診断を受けてから、ずっと孤独感がありました。同じ時期に子どもを産んだ友人のSNSを見ると、幸せそうな投稿ばかりで苦しくなることもある一方で、自閉スペクトラム症の当事者や保護者が書いた本や漫画に救われた経験がありました。私たちが公表することで救われる人もいるかもしれない、発達障害への理解が広がれば湊が生きやすい社会になるかもしれないと考えて、公表することにしました。

龍先生

公表された後、周囲の反応はいかがでしたか?

倉持さん

温かい応援や共感のメッセージが多く、「実はうちもグレーで、病院に行く勇気が持てずにいました」といった声もたくさんいただきました。孤独だと思っていましたが、仲間がいるのだと実感できました。

龍先生

自閉スペクトラム症の「症」がつかない、つまり特性としての自閉スペクトラムの人は、実は10人に1人ほどいるとも言われています。程度の濃淡があって、日常生活に支障が出たり、本人や周囲が困ったりする場合に「症」が付きます。

倉持さん

湊は今後、成長とともに特性が変わっていくこともあるのでしょうか?

龍先生

自閉スペクトラム症は脳のタイプとして一生涯続くとされていますが、学習や環境への適応によって、対応の方法が身についていくこともあります。湊さんが自分でヘッドホンをつけられるようになったことは、その一例といえます。最後に、湊さんへの思いや今後の展望を聞かせていただけますか?

倉持さん

定型発達の子に近づけることは難しいと思いますし、無理に近づけようとしなくてもいいと感じています。湊は湊で、得意なところをもっと伸ばしていければいいなと思っています。私も夫も好きなことを仕事にして生きているので、湊にもこれで生きていきたいと思えるくらい好きなものがみつかるとよいなと思っています。湊がキラキラ輝けるものを、これからも一緒に探していきたいです。

龍先生

同じように発達障害のお子さんを育てている親御さんに向けてもメッセージをお願いできますか?

倉持さん

ほかのご家庭の育児と比べたり、孤独を感じたりする人も多いと思います。しかし、私自身は病院や療育とつながることができて良かったと感じています。気になることがあれば、相談窓口や保健所、病院に相談してみてほしいです。また、子どもが健やかに育つためには、親のメンタルが本当に大切です。詰め込みすぎず、無理をしすぎず、周りの人や行政、専門家の力を借りながら過ごしてほしいと思います。

龍先生

何よりお伝えしたいのは、その子ができることよりも、その子自身の存在そのものが大切だということです。保護者だけで抱え込まず、療育センターや放課後等デイサービスなど、専門家にSOSを出すことをためらわず、一人で向き合いすぎないでほしいと思っています。

配信元: Medical DOC

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