「自律神経失調症」と言われた不安・イライラ、『甲状腺』が原因かも【医師解説】

「自律神経失調症」と言われた不安・イライラ、『甲状腺』が原因かも【医師解説】

「最近イライラしやすい」「不安感が強い」「気分が落ち込む」――こうした症状が続いたとき、ストレスやメンタルの問題を疑う人は少なくありません。しかし実際には、甲状腺ホルモンの異常によって、精神症状として表れているケースもあります。そこで、メンタル症状と甲状腺ホルモンの関係について、ひるま甲状腺クリニック蒲田院長の蛭間 重典先生に話を聞きました。

※2025年10月取材。

蛭間 重典

監修医師:
蛭間 重典(ひるま甲状腺クリニック蒲田)

東邦大学医学部を卒業後、国立国際医療研究センター、東邦大学医療センター大森病院、伊藤病院(甲状腺専門)で経験を積み、これまでに1万人を超える甲状腺疾患の患者さんの診療に携わる。2025年、東京都大田区に「ひるま甲状腺クリニック蒲田」を開院。医学博士。日本内科学会総合内科専門医。日本甲状腺学会専門医・評議員。日本甲状腺学会ロシュ若手奨励賞(Young Investigator Award)、甲状腺病態生理研究会研究奨励賞などを受賞。日本甲状腺学会次世代研究者の会(NexT-JTA)所属。金沢医科大学非常勤講師を兼任し、甲状腺・副甲状腺領域の学生指導を担当。

「ストレス」「自律神経失調症」… それ、本当に大丈夫?

「ストレス」「自律神経失調症」… それ、本当に大丈夫?

編集部

最近イライラしやすく、不安感もあります。ストレスでしょうか?

蛭間先生

ストレスの可能性ももちろんありますが、「最近ストレスが多いから」と自己判断してしまうのはやや危険です。甲状腺ホルモンの異常や更年期症状など、ほかの要因が関係している場合もあります。

編集部

甲状腺の異常で、精神的な症状が出ることがあるのですか?

蛭間先生

あります。甲状腺ホルモンは全身の代謝を調整しているホルモンで、脈拍、体温、エネルギー消費などに関わっており、脳の働きにも影響しています。セロトニンやアドレナリンの調節にも関与しているため、甲状腺ホルモンの異常はメンタルの不調・変調として表れることがあるのです。実際に「自律神経失調症」などと言われていた人が、検査をしてみると甲状腺に異常が見つかったというケースも少なくありません。

編集部

「自律神経失調症」と言われている人は結構多い印象があります。

蛭間先生

そうですね。ただ、実は「自律神経失調症」というのは、明確な診断基準が定められた正式な病名ではありません。動悸(どうき)、だるさ、不安感、気分の落ち込み、めまいなど、さまざまな不調をまとめて表現する際に使われることも多く、言葉だけが一人歩きしている部分もあります。そのため、「自律神経の問題でしょう」と言われていても、背景に甲状腺疾患など別の病気が隠れているケースもあります。

編集部

「自律神経失調症だから」とか、「ストレスのせいであって病気ではない」などと自己判断するのは危険ですね。

蛭間先生

そのとおりです。実際に、バセドウ病などの甲状腺疾患がある人が最初に心療内科や精神科を受診しているケースは少なくありません。気分の波が大きくなったり、眠れないのに活動的になったりして、双極性障害などの精神疾患と疑われることもあります。その結果、甲状腺ホルモン異常の診断や治療が遅れてしまう場合があるため注意が必要です。

甲状腺ホルモンとメンタル症状の関係

甲状腺ホルモンとメンタル症状の関係

編集部

「バセドウ病」とはどのような病気ですか?

蛭間先生

甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、甲状腺機能亢進(こうしん)症の代表的な疾患です。代謝が過剰に高まるため、動悸、発汗、体重減少、疲れやすさなどが表れます。また、精神的にも興奮しやすくなったり、不安感が強くなったりすることがあります。

編集部

甲状腺ホルモンが不足する場合は、どのような症状が表れるのですか?

蛭間先生

甲状腺ホルモンが少ない甲状腺機能低下症では、疲労感、眠気、無気力、気分の落ち込みなどが表れることがあります。本人としては「うつっぽい」と感じるケースも少なくありません。さらには言葉の出にくさや記憶力の低下を伴うこともあり、認知症と混同されることもあります。

編集部

精神疾患と甲状腺の病気は、どこで見分けるのですか?

蛭間先生

精神症状単体では区別が困難なケースも少なくありません。見分ける際のポイントとなるのは、精神的な変化だけでなく、異常な汗の出方、動悸、急激な体重変化といった身体症状が同時に現れているかどうかという点です。

編集部

ほかにはどういった場合、甲状腺機能検査を受けたほうがよいですか?

蛭間先生

抗うつ薬や安定剤を使っても症状がなかなか改善しない場合や、気分の波が周期的に表れる場合、さらには無気力や記憶力低下が目立つ場合などが挙げられます。こうした状態が見られる場合、その背景に甲状腺ホルモンの異常が隠れている可能性があります。

配信元: Medical DOC

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