一本だけの入れ歯は、部分入れ歯といって、部分的に歯を失った箇所を補うために使用する器具です。1本だけの入れ歯は、周りの歯を支えにするため、その留め具が目立ってしまうのではないかと心配する方も少なくないでしょう。
そこでこの記事では、一本だけの入れ歯について、目立ちやすさや、入れ歯の種類、そして、目立ちにくくするポイントを解説します。

監修歯科医師:
松浦 京之介(歯科医師)
歯科医師。2019年福岡歯科大学卒業。2020年広島大学病院研修修了。その後、静岡県や神奈川県、佐賀県の歯科医院で勤務。2023年医療法人高輪会にて勤務。2024年合同会社House Call Agencyを起業。日本歯科保存学会、日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会の各会員。
一本だけの入れ歯の基礎知識

一本だけ入れ歯を作ることはできますか?
はい。一本だけの入れ歯は、部分入れ歯というかたちで作ることができます。
一本だけ歯を失った場合には、失った箇所の周囲の残った歯を支えにして装着可能な部分入れ歯が作れます。
一本だけの入れ歯は目立ちますか?
一本だけ失った歯を補う入れ歯は部分入れ歯に分類され、種類や装着する位置によって目立ちやすさが異なります。
保険診療の部分入れ歯では、一般的にクラスプと呼ばれる金属製の留め具を隣接する歯などを支えにして固定します。前歯に近い位置や、笑ったときに見えやすい場所にクラスプがある場合は、銀色の金属が目立つことがあります。一方、奥歯や下顎の歯など外から見えにくい位置では、目立ちにくい場合もあります。
自由診療では、歯茎に近い色のクラスプがついているものや、樹脂で入れ歯を固定するノンクラスプデンチャーなどを選べる場合があります。目立つ金属製のクラスプを使用しないため、保険診療の部分入れ歯よりも自然に見えやすいことが特徴です。ただし、設計によっては金属を併用することもあり、すべての症例に適しているわけではありません。
一本だけの入れ歯にはどのような種類がありますか?
一本だけ失った歯を補う部分入れ歯には、主に金属製のクラスプを使用する部分入れ歯のほか、金属のクラスプを使用しないノンクラスプデンチャーなどがあります。
クラスプを使用する部分入れ歯は、人工歯と歯茎に似せた樹脂製の土台、クラスプと呼ばれる留め具で構成され、残っている歯に固定して安定させます。保険診療で広く使用されていますが、装着する位置によっては、笑ったときに銀色のクラスプが見えることがあります。
ノンクラスプデンチャーは、目立つ金属製のクラスプを使用せず、歯茎に近い色の樹脂部分を残っている歯の周囲に沿わせて固定する部分入れ歯です。人工歯の色も周囲の歯に合わせて選べるため、装着していることがわかりにくく、自然な見た目に仕上がりやすいことが特徴です。ただし、素材によっては修理や調整が難しく、残っている歯への負担が必ずしも少ないとは限りません。
このほかにもさまざまな入れ歯があり、歯科医院によって取り扱う内容も異なりますので、まずは治療を受ける歯科医院で作製可能な入れ歯について相談してみるとよいでしょう。
目立たない一本だけの入れ歯

目立たない一本だけの入れ歯にはどのようなものがありますか?
目立ちにくい一本だけの部分入れ歯には、ノンクラスプデンチャーや、特殊な固定装置を使用する入れ歯などがあります。こうした入れ歯は基本的に自由診療で、取り扱っている種類や費用は歯科医院によって異なります。
特殊な固定装置を使用する入れ歯として代表的なものの一つが、コーヌス義歯と呼ばれる入れ歯です。
コーヌス義歯は、残っている歯に内冠と呼ばれる金属製のキャップを被せ、その上から入れ歯側の外冠を重ねて固定する部分入れ歯です。金属製のクラスプが外から見えず、ずれたり外れたりしにくい構造が特徴です。一方、支えとなる歯を削る必要があり、一般的には複数の歯を失った症例で用いられることが多いため、一本だけの欠損に適しているかは慎重に判断する必要があります。
ほかにも、入れ歯と残っている歯を小型の連結装置で固定するアタッチメント義歯が選択できる場合もあります。外から金属製のクラスプが見えにくく、入れ歯を安定させやすいことが特徴ですが、支えとなる歯の処置が必要で、適応できる症例は限られます。
目立たない一本だけの入れ歯はしっかり噛めますか?
目立たない一本だけの入れ歯は、種類によって噛みやすさが異なります。
目立たない入れ歯として代表的なノンクラスプデンチャーは、強く噛むと外れやすい傾向があります。ただし、装着部位や構造によっては安定性が高まる場合もあります。
一般的に樹脂製のため天然歯やセラミックの歯などと比べると強度は低く、硬いものを噛むと変形や破損のリスクもあります。
コーヌス義歯は、目立ちにくい部分入れ歯のなかでも安定性が高く、しっかり噛みやすいことが特徴です。ただし、強い力が加わると破損する可能性があります。
このように、入れ歯の種類によって噛みやすさが異なるため、どの程度の噛みやすさを目指したいかを歯科医師に伝え、目的に応じた治療を受けることが大切です。
目立たない一本だけの入れ歯はずっと装着したまま過ごせますか?
目立ちにくい一本だけの入れ歯も、基本的には24時間装着したまま過ごすことは推奨されません。食後は取り外して清掃し、就寝時も歯科医師から特別な指示がない限り外すことが一般的です。
食後に取り外すのは、入れ歯や支えとなる歯に食べかすや歯垢がたまりやすく、むし歯や歯周病、口臭、義歯性口内炎のリスクを高めるためです。
また、就寝時に外すのは、歯茎や粘膜を休ませることに加え、睡眠中の誤飲や誤嚥、歯ぎしりや食いしばりによる入れ歯や支えの歯への負担を防ぐためです。
なお、治療直後などは就寝中も装着するよう指示される場合があるため、取り扱いについては歯科医師の指示に従いましょう。

