PTA廃止は行政に意見を述べるチャンスをなくす
前述の事柄だけを見ると、PTA問題を解消するために廃止することはひとつの方法かもしれません。しかし実際には、大きなデメリットがあるそうです。
「個人的には、PTAを廃止することは良いことだとは思えません。東京都中学校PTA協議会のような連合会は、行政に物申せる力を持っています。その組織から抜けるということは、行政に意見を述べるチャンスを手放すことと同じです。例えば、連合会組織がきちんと機能していれば、エアコン設置を行政に強く要望できます。しかし、要望が実現した時、加盟していない、負担も活動もしていない本校も恩恵を受けることになります。果たして、それでいいのでしょうか? 責任を果たさずに恩恵だけ受けるのは、人の道に反する気もします」
もしも、全校がPTAを廃止してしまったら、全国の保護者が行政に対し、何も言うことができなくなります。結果、学校環境に何か問題が起きたとしても、それを改善する手立てを失うことになりかねない。そう田中先生は警鐘を鳴らします。
保護者が活動しなくなると教育の質が低下する
PTAには、学校(教員)のサポートをする側面もあります。廃止することによって、保護者がそれらの活動を一切しなくなるとどうなってしまうのでしょうか?
「保護者の支援活動によって、教育環境が整えられている部分があります。PTA活動がなくなると、教員だけでは手が回らずに教育水準を低下させてしまう場面も出てくる可能性があります。教育の質的低下を招き、ひいては学力低下にもつながってしまいます」
“PTAは絶対不要だ”という声をよく耳にしますが、廃止経験校の意見に耳を傾けると、廃止したほうが良いとは一概には言えなそうです。仮に、「共働き家庭でPTA活動が負担になるから」という理由だけで廃止すると、保護者の負担は軽くなっても、子どもへ悪影響を及ぼす可能性も。PTAには、保護者と学校と地域が連携して、子どもの教育や安全を見守るという目的があることを忘れてはなりません。
(文・奈古善晴/考務店)
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